“体育会系”居酒屋では勝ち残れない 「塚田農場」APカンパニー社長に聞く

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ビジョン実現へ、創業メンバーへの情も断ち切る

一緒に汗水垂らしてやってきた彼らへの情は当然ある。でも、彼らからは「よっしゃ、農業を勉強してやる」という言葉は聞かれず、出てくるのは居酒屋をもっと強化しようという話だけ。これからのビジョンを考えたときに、もっと優秀な人材が必要だった。

だから「誰と実現したいか」から「誰となら実現できるか」に変わってきた。創業時のメンバーは店長にしたり、資金援助して独立してもらったりして、別の優秀な人材にスパッと入れ替えた。情だけにとらわれていたら会社は伸びない。

――既存の外食と比べ、目指すものの違いは何か。

大手の居酒屋チェーンには、わーっとやって話題は作っても既存店売り上げの前年対比が悪すぎて開示できない会社が結構ある。僕は生きている間は事業を続けたいから、短命で終わるのは嫌だ。短命で終わりそうな最近の経営者を見て、すべて反面教師にしている。

物事には王道がある。マーケットやトレンドを理解しなければ、自社のブランドも表現できない。店作りやブランディングは、しっかりやる。飲食店は路地裏の個人店にたくさんヒントがある。そうしたマーケットの空気につねに触れて感性を磨くため、外食の経営者はもっと遊ぶべきだ。

食産業は97兆円の市場規模がある。23兆円の外食は不況と言われるが、APカンパニーを外食でくくらないでほしい、いち早く居酒屋だけの会社から抜け出さなければとやってきた。マザーズ上場はゴールでも何でもない。2~3年で東証1部へ上場したい。

本当は上場のタイミングで居酒屋以外の中食、通販、小売りを立ち上げて、販売チャネルを複数持っていますという地点からスタートしたかったが、まだそこまでは行っていない。今後は23兆円の外食産業という小さな世界でだけでなく、97兆円の食産業へ挑んでいく。

(撮影:梅谷 秀司)
 

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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