松下幸之助は「企業は天下のもの」と考えた 失敗する人には「私心」がある

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幸之助が会社は個人のものではない、公のものであると言っていた理由とは?(撮影:高橋孫一郎)

「会社の仕事を公(おおやけ)の仕事だと社員に訴え続け理解してもらったことも、成功の要因のひとつと言えるわな。会社は個人のものではない、わしひとりのものでもなければ、社員一人ひとりにとっても個人のものではない。公のものである、と、そういうことを言ってきた」

会社をやっていくにあたって、なにが必要かと言えば、まずおカネである。おカネがなければ会社をつくることも経営をしていくこともできない。さて、そのおカネというのは誰のものでもない。カネは天下のまわりものと言うが、公のものである。

それに物(材料)もいる。それも、もとをさかのぼれば、天下のものと言える。人材も同じである。人というのは誰のものでもない、天下のものである。すなわち経営の基本である人、物、カネ、これは「すべて公のもの」と言える。

会社は個人のものではない

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「そうであるとすれば天下の人、物、金を預かって営む企業というものは、これまた天下のものと考えないといかん。個人のものとは言えんな。公のものということになるわな。そうであるとすれば、企業は社会のため、世間の人たちのため、役に立つような働きをしないといかんということになる。

だから、われわれの会社は個人の会社ではなりません、公の、天下の会社であります、われわれは個人のために仕事をするのではない、われわれ自身だけのために経営をしているのではない、社会の人びとのため、社会の発展のため、人びとの幸せのために仕事をするんです、と、そういうことをみんなに話してきたんや」

すると社員の人たちも、自分たち自身のためだけではない、社会のために働いているのだと考えるようになる。仕事にいっそうの誇りが持てる。なお一生懸命に仕事に取り組まなければならないとなる。いわば公に尽くす心意気というものが、社員のなかに生まれてくる。そのような会社であれば、一段と発展するに決まっている。

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