松下幸之助は、「聞く心」を大切にしていた

問題意識があれば「風の音」からも悟る

風の音を聞いただけでも、何かを悟る人がいる(写真:Shin@K/PIXTA)

ある寒い冬の日、私は松下幸之助といつものように真々庵の茶室でお茶を飲んでいた。木枯らしが吹き、杉木立のひゅうひゅうと鳴る音が聞こえていた。すると突然松下が、

「きみ、風の音を聞いても悟る人がおるわなあ」

と言った。私はそのとき、松下が何のことを言っているのか意味がわからず、ただ「はぁ、そうですか」と返事をしただけであった。

「聞く心」があれば、悟ることができる

後になってよく考えてみると、松下は私にもっと勉強してほしいと思っていたのではないだろうか。問題意識があれば、風の音を聞いても悟る人がいる、ということである。

聞く耳を持っていたら、聞こうという気持ちを持っていたら、何でもない風の音を聞いてもハッと悟ることができるのに、きみと話をしていても、なんとはなしに頼りない。もう少し問題意識を持って話を聞け。松下はこう言いたかったのではないか、と気づいたのはしばらくたってからのことだった。おそらくこのように言いたかったのだろう。

「話をするよりも、話を聞くほうが難しいな。いくらいい話をしても、聞く心がなければ何も得ることはできんが、聞く心があれば、たとえつまらん話を聞いても、いや、たとえあの杉木立を鳴らす風の音を聞いても、悟ることができる人は、悟ることができる。そんなもんやで」

たとえばニュートンである。リンゴの実が枝から落ちるのを見て万有引力を発見した。リンゴが落ちる光景は、それまで何万人、何千万人もの人が見ているはずである。それにもかかわらず、ニュートンだけが宇宙の真理のひとつを発見した。耳を傾ける心があったからである。

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