「地域再生の進まない街」が抱える残念な特徴 気鋭の経済学者が日本経済復活のカギを語る

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常見:経営者も、管理部門の責任者も採用が生命線だって気付いていないんです。これが地方の中堅・中小企業の難点です。地方でセミナーをやると「管理部」という部門の人が出てくるのです。この部門の人が総務も人事も経理みたいなことも全部やっているのですね。もちろん、企業規模の問題や予算の関係もありますが。採用は片手間の仕事だと思ってしまっている。採用に成功している企業ほど、専任の担当を置いています。

大手企業も含めて、管理部っぽいやり方の採用活動と、営業部っぽい採用活動というものがあります。つまり、待ちの姿勢で応募してきた人を選考するのか、自ら世の中から優秀な人を探しだして狩りに出かけるか、という。

優秀な人材とはいったいどんな人材か

飯田:採用側、労働者側双方が「優秀の罠」にはまっているんじゃないかと思います。これは僕の造語ですが、企業経営者、採用担当者は口をそろえて「優秀な人材が欲しい」って言うんですよ。でも、優秀な人材ってなんですか?例えばTOEICで850点以上持っていて、MBA(経営学修士)を持っているとしたら、確かに優秀かもしれませんが、あなたの会社で何の役に立ちますかと。

常見:道の狭い下町にフェラーリは要らない。

飯田:しかもオーバースペックって意味だけじゃなくて、そもそもいらないスペックを求めているかもしれない。有名大企業が「優秀な人」を採るのだって、英語の能力、ましてや受験学力が仕事の役に立つからではないわけです。

常見:伝統的な日本の企業が、東大に代表する選抜度の高い大学から人材を採るのはきわめて合理的なんですよ。長期にわたり、ジェネラリストで、いろんな部署を経験するので、ずっと学び続ける姿勢が必要なんです。

飯田:英語が得意な人を採っているんじゃなくて、継続的な学習をできる人間を採っているだけともいえるわけです。実際のところ、業種や部署によって英語そのものはほとんど必要とされないというケースも多い。

常見:「グローバル化の嘘」に気づいたほうがいい。例えば、よく馬鹿にされる受験英語ですけど、ちゃんと実務では役立ちます。グローバル化するとみんな下手糞な英語で話す。むしろメールのやりとりとか、契約書の読み書きができることがすごく大事で。海外赴任した人たちはみんな受験英語に感謝していたりする。

飯田:日本人の英語は聞きやすいという人もいます。なぜならローマ字をそのまま呼んだような発音だからだ、と。日本人の発音は下手だっていう話が普通なんですが、下手なので英語ネイティブじゃない人にとっては聞き取りやすかったりするわけです。

地方の問題に関連して、「東京一極集中はこれ以上効率的ではないかもしれない」とも考えています。確かに東京は1人当たりの労働生産性は高い。ただ、これって労働時間に換算しているんですね。企業側からみると正しい指標なんですけど、労働者個人としては、「(労働時間+通勤時間+通勤で疲れたので休憩する時間)÷稼いだ額」なんですよ。これでみると東京って地方に比べて大して生産性が高いとはいえないかもしれない。

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