週刊文春は、どんな記事を「ボツ」にするのか 木本が「記事化の基準」をあれこれ聞いた

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新谷:読者が興味をもってくれそうなことを書くのは当たり前だし、売らんかなと批判されますが、苦労して作っているのですから、1部でも多く売れたほうがいいに決まっているのです。そのあたりは、芸人さんと同じモチベーションです。

木本:それは、とてもよくわかりますね。

新谷:読者、お客様が神様。面白がってもらって、可愛がってもらって、育ててもらって、親しみをもって接してもらうのがいちばん大事なので、その目線だけは絶対にキープしたいというのが大前提としてあります。

木本:なるほど。スクープだけじゃなくて、以前は「はなちゃんのみそ汁」とか、ヒューマンドキュメントの本を作ったこともあると聞いたんですが。がつがつとスクープを追うだけではなく、そういった部分も大切にしているのでしょうか? 足の長い、文芸に近いというか。

「人間への興味」がすべての大前提

新谷:根っこは同じだと思うんですよ。調査報道のスクープでも、時間かけることもありますし、おっしゃったようなヒューマンドキュメントも好きでやるんですが、共通しているのは人間への興味なんです。

木本武宏(きもと たけひろ)/1971年大阪府生まれ。1990年木下隆行とお笑いコンビTKOを結成しツッコミを担当。2006年、東京へ本格的進出。S−1バトル優勝、キングオブコント総合3位などの受賞歴がある。ライザップで肉体改造に成功し、テレビドラマやバラエティなど、ピンでも活躍中

木本:人間への興味が原点にあるんですね。

新谷:人間しかないんですよ、人間がいちばん面白いに決まっている。ひとりの人間もいろんな顔を持っていますよね。木本さんだって、たぶん誰にも見せられない顔を持っていると思うんです。

木本:確かに、ありますね。

新谷:人間の都合のいい顔、きれいな顔、美しい顔だけじゃなくて、裏のドロドロしてたり、醜かったり、愚かだったり、浅はかだったり、いろんな顔があるから人間は面白い。それを伝えていくべきだと。ただし、相手が嫌がる裏の顔を何でもかんでも暴けばいいのかというと、それは違うんです。

木本:暴露することが第一の目的ではない。

新谷:相手がどういう人なのかをものすごく慎重に考えないと、取材のテーマやターゲットを決めるにも、世の中にどれだけの影響力がある人物か、どんな権力がある人物か、さまざまなことを考えて、その上で決める。

木本:いろいろな価値判断があると。

新谷:有名な人のちょっとした話と、有名じゃない人のでっかい話、どっちを大きくやるか、あるいはどっちをやるか、やらないかは悩みます。

木本:天秤があるということですね。知名度が低い場合のスクープは、内容的にはどぎついものが出てくると。最初に四つのスクープの説明を受けましたが、「意義があるけど、地味なやつ」ですね。

次ページ大抜擢されるとなると、興味が湧きますよね?
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