相場格言「夏場は撤退しろ」は今年も有効か 夏場のイベントがプラスに働くかが焦点だ

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25日移動平均線(1万6559円、16日)がいったん上昇基調に転じており、4月25日高値を早期に上抜けるチャンスのタイミングではあります。ただ、逆に4月25日高値を起点に、下げ→上げ→下げといったような2回下げる調整によって、2月12日安値(1万4865円)を再びトライする展開なども十分あり得る段階です。

米国では一般的に、5月最終月曜日の「メモリアルデー(戦没者追悼記念日)」が夏の始まり、9月初めの「レイバーデー(労働者の日)」が新学期のスタートでもあり、夏の終わりと認識されています。

相場でも、"Sell in May and go away. Don't come back until St Leger Day."「5月に手仕舞いして(相場から)撤退せよ、セント・レジャー・デー(9月第2土曜日)まで戻ってくるな!」という格言があるぐらい特別な期間です。今の時期になると毎年耳にするこの相場格言。「夏場の撤退」は本当に有効なのでしょうか。

格言通りにしたほうが高パフォーマンス

過去を検証すると納得できます。仮に、10月から5月までS&P500で運用し、6月から9月までの夏場は市場から撤退するという投資方法を採用したとします。1996年から今年4月までの約20年間でその投資方法を続けた場合、累積リターンで400%、年率で8.24%となり、実際にS&P500で通年運用した場合の累積リターン235%、年率6.13%を大きく上回るパフォーマンスになります。

一方、6月から9月までS&P500で運用し、10月から5月までは市場から撤退するという投資方法を採用したとしますと、この20年間はまったく利益を得られなかったというか、累積リターンがマイナス33%、年率マイナス1.94%とマイナスになる検証結果となりました。たとえば、これを10月から4月、5月から9月に二分してもおおむね同じ結果となります。

筆者には信じたくないアノマリーですが、イベントが多い今年の夏場はどうでしょうか? 伊勢志摩サミットや消費増税再延期の判断の有無、6月2日にはOPEC(石油輸出国機構)総会があります。筆者の見立てによると、近年は6月から原油価格が下げるアノマリーがあり、そうなると米国株は売られる。ドーハ会合から何も変わったムードはなく、むしろ世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアでは、在任20年のヌアイミ石油鉱物資源相が退任。サウジ中心のOPECの政策に大きな影響が生じる可能性もあります。

6月にはFOMC(米連邦公開市場委員会)の開催や英国ではEUから離脱するかを問う国民投票が実施されます。英国のEUからの離脱が実現すれば、経済的にも大きな不安材料。7月にはギリシャ国債の今年最大の大量償還日が到来するようです。来年に選挙を控えたドイツのメルケル首相は、ギリシャに対して再び柔軟な姿勢で対処できるでしょうか。国内でも政局や金融政策面での駆け引きがあります。

あとは中国のリスクです。シャドーバンキングの問題をはじめ、いろいろありすぎてどこに焦点を絞ってよいのかわかりません。比較的軽い内容では、8日に発表された4月貿易統計の悪化を通じて、上海総合指数が3月中旬以来の水準まで下げてきました。株価の動きをみていると、何かがあるような気がしてなりません。ズルズルと下落基調が続くようだと、日本株にとっては円高に続くリスク要因となります。

以上、夏場のイベントがマーケットにポジティブに働き、中国のリスク要因を覆いかぶせることができるかが、今年後半に向けての大きなポイントのひとつではないかと思います。

東野 幸利 国際テクニカルアナリスト

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ひがしの ゆきとし / Yukitoshi Higashino

DZHフィナンシャルリサーチ 日本株情報部長。証券会社情報部、大手信託銀行トレーダー、大手銀行などの勤務を経て2006年に入社。マーケット分析やデリバティブ市場のコンテンツを担当。IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)教育委員、日本テクニカルアナリスト協会理事なども務める。
 

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