JALの公的再生は失敗だ 【短期集中連載】冨山和彦氏に聞く(最終回)

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日本航空(JAL)やカネボウ、ダイエーなど数多くの企業再生や経営改革に携わり、オムロンの社外取締役なども務める冨山和彦氏(=上写真=)のロングインタビュー最終回。冨山氏は再上場を果たしたJALの再建問題を振り返り、公的再生の問題点を指摘。「企業倒産は悪ではない」と主張する。第2回目はこちら

 

JALが再上場したこと自体は正しい。国民負担を生まないことが大事だということと国が早く手を引くべきだということは間違っていない。だから、再上場を選んだ以上はできるだけ早く再上場したほうが良かった。

しかし、「そもそも論」まで遡ったときには違う議論になる。

国が民間企業を支援する場合、競争歪曲という問題がつきまとう。イグジットする際、この問題に対する解決策は2通りある。一つは市場経済的な解決。これは経営支配権を売却、オークションにかけることです。そうすれば開かれた競争入札で、競争相手も公的支援の果実を手に入れる機会が生まれる。もう一つはEU競争法のガイドライン的な解決。これは競争政策的な解決方法で、あくまでも経営支配権をオークションでかけないときに出てくる。

カネボウ再生は競争歪曲ではなかった

私がCOOを務めた産業再生機構では全部経営支配権をオークションにかけた。産業再生機構の経営陣はこの問題を非常に重要だと考えていたからだ。当初、カネボウのときは競争歪曲という批判があったが、結果的に花王が競り落とした。そうすると、その問題が消えてしまう。だから、産業界から文句は出なかった。

オークション、競争入札にかけるのは、価格の最大化を図る上での担保にもなる。経営支配権というのは通常はプレミアが付くので、普通に上場するよりも高値が付く。そのことはソフトバンクによるイー・アクセス買収でもわかる。なので、経営支配権の競争入札をしたほうが、再上場よりも高く売れる。

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