JALの公的再生は失敗だ 【短期集中連載】冨山和彦氏に聞く(最終回)

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JALの管財人でもあった企業再生支援機構は、どういうワケかかなり早い段階で再上場によるイグジットという選択をしたようだ。が、その選択をした時点で競争歪曲の問題にどのような回答を用意するか、当時の経営陣は考えなくてはいけなかった。

企業再生支援機構がJALの支援を決めた段階で、競争歪曲の問題についてANA(全日本空輸)も、私も発言していた。そうした周囲の声に耳を貸さなかったということになる。だから、競争歪曲の問題について企業再生支援機構の責任は相当に重い。

ただし、競争歪曲という問題に関して、少なくともJALには責任はない。JALは法律上の制度を使っただけだから。一私企業に過ぎないJALが、競争の公平性や国民資産投入にかかわる透明性だとかには何ら責任を負っていない。やはり国の側というか企業再生支援機構なり、国交省側に問題があったと思う。自民党にあれだけワーワー言われるまで大した問題じゃないと思っていたとすれば、不作為責任は大きい。

JAL増資問題の本質

JALに関しては変な増資もやっている。あの増資は論外だ。(注:2011年3月に京セラなど8社に対して、1株2000円で127億円分の第三者割当増資が行われた件)

当時のJALは非上場なのでインサイダーとの批判は当たらないが、この増資が問題であることは間違いない。

この問題の本質は、あの増資が割安な価格で行われていたとしたら、その前に投じられた3500億円の国民の税金による資産が希薄化するということだ。

2010年11月の更生計画認可を受けて、12月に企業再生支援機構が第三者割当増資に応じる形で1株2000円で3500億円を入れている。更生計画の時点で11年3月期の営業利益予想は約640億円だった。しかし、問題の増資が行われた翌年3月段階では1600億円以上の営業利益が出ることがわかっていた(最終的には1884億円)。

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