JALの公的再生は失敗だ 【短期集中連載】冨山和彦氏に聞く(最終回)

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この10年12月と翌年3月で株価の評価が同じということはあり得ない。利益は3倍になっているのだから、収益還元法で考えれば株価は3倍になっていておかしくない。まあ、3倍というのは極端ではあるが。

つまり、2回目の11年3月の第三者割当増資には有利発行の疑いがある。有利発行であれば、最初の3500億円を希薄化させることになる。3500億円は国民の税金から出ている以上、それは明らかに問題だ。

もし、同じ株価で増資をしなければならない理由があるなら、説明責任は当時の管財人にある。普通の会社更生法なら利害関係者だけだからこうした問題は生じない。しかし、今回は公的資金を入れているので1億2000万人の国民全員に対する説明責任を負っている。

産業再生機構では「あり得ない」

産業再生機構ではあり得ない判断です。11年3月に増資をする必要があったとしたら、その時点で、ブックビルディング方式で値段を付けさせます。

それが株価の計算方法を明らかにしていないし、引受先も明らかにしなかった。守秘義務だというが、国の機関である企業再生支援機構が税金を使っていることに対して、国民一般への説明責任という公益に勝る守秘義務とは何あるのか。

それができないとすると二通りしかない。引受先が異様に高く株を買っているから、彼らが株主に対して説明が付かないという事情。もしくは、異様に安いから世の中に批判されるからという事情。いずれにしろ守秘義務によって守るべき正統の利益ではない。

どんな契約でも、公益上の要請があればそちらが勝る。そんなのは当たり前のことだ。公的機関として、そのバランス感覚がなかったとしたら批判を受けるべきでしょう。

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