突破力あるリーダーとは(上) 新世代リーダー 石川康晴 クロスカンパニー社長

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初年度は4000万円の売り上げで、比較的順調にフライトできたと思っています。翌年が一億円で、約2・5倍になりました。その次が2億円、4億円と、2〜3倍のペースで順調だったのですが99年にSPA戦略、つまり製販一体型の会社にしようと意思決定をしました。

実はこの裏側にある背景がありました。当時3店舗のセレクトショップを展開していたのですが、13人いた社員が10人辞めました。社長がバカだからという理由です。

実は年々、売れることで調子に乗ってきて、3万円のワンピースを売っていたお店が5万円のワンピースを売り出す。5万円のワンピースを売っていた店が10万円のワンピースを売り出す。10万円のワンピースを売っていた会社が今度は15万円のワンピースを売ると。挙句の果てに売り上げは下降局面で在庫過多になっているのに、私が「東京の代官山に店を出す」と店長会で言ったところ、13人中10人が辞めますと、退職届が出てきました。

非常に悩んで、どうしようかと思ったのですが、たまたま運よく3人の社員が残ってくれました。「私たちは絶対に辞めませんから、社長の思う通りにやってください」と言ってくれる部下がいまして、その人のためにどうしなければいけないのか一生懸命考えて編み出したのがSPAです。

300億円ブランドの誕生

これまでの自分の考え方を180度変えて、ヨーロッパから買い付けをしていた会社の体質を製販一体型の会社にし、高額品を止めてリーズナブルなものをつくる。さらにモードをやめて、ベーシックなものをつくるということで生まれたのが、earth music&ecologyという、我々が今旗艦ブランドとしてマーケットで300億円売っているブランドです。

このブランドを開発したのが99年。非常に先見性のある戦略というよりも、いろいろな局面の中で「むしろ全員が賛成するようなことを考えてみてもいいのでは」と、SPAを考えたのです。 

GAPなどアメリカにあるSPAの先駆的な会社や日本ではワールドという会社などを分析しながら、ある程度物まねで始めたSPAですが、このころは自分もミシンを踏んでいましたし、ボタン留めや、裁断も行っていました。デニムをハサミで切ると手がかなり青くなっていくのですが、お店に立っていたころは夜にデニムを切ったり縫ったりしていたので、よくお客さまから「お兄さん、顔も青いけど手も青いね。倒れないでください」と言われたものです。

業績は、当時で言うと約3000万円の赤字だった会社がV字回復で6億の利益となりました。逆さまから考えるという発想で生き残れたと、今思っています。この発想が無ければ今ここに立っていないと思いますし、もう少し苦しんでいたのではないかと思っています。

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