「リーダーはやっぱり体力ですね」 新世代リーダー 山口絵理子 マザーハウス社長

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山口絵理子
マザーハウス社長兼デザイナー
山口絵理子
1981年埼玉県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業、バングラデシュBRAC大学院開発学部修士課程修了。大学のインターン時代、ワシントンの国際機関で途上国援助の矛盾を感じ、アジア最貧国「バングラデシュ」に渡り、現地の大学院に進学。「かわいそうだから買ってあげる商品じゃなく、商品として競争力があるものを途上国から世界に発信する」という理念のもと、大学院卒業と同時に24歳で起業し、「株式会社マザーハウス」を設立。現在バングラデシュで特産のジュート(黄麻)やレザーでバッグや小物を、ネパールでは現地のシルク、コットン、ウールなどを用いたレディースの洋服を生産。著書に『裸でも生きる ~25歳女性起業家の号泣戦記~』『裸でも生きる2 Keep Walking 私は歩き続ける』『自分思考』(共に講談社)がある。Young Global Leader 2008、Social Entrepreneur of The Year in Japan 2010グランプリ受賞等。
「途上国から世界に通用するブランドをつくる」――そんな理念のもと、2006年に産声を上げたマザーハウス。同社は、バングラデシュでバッグを、ネパールでアパレルや服飾雑貨を製造し、日本と台湾で直営店を12店舗展開している。
マザーハウスブランドのデザインを担当するのは、社長も兼任する山口絵理子さん。彼女は今、日本で最も有名な女性起業家の一人であると同時に、デザインと経営を両立する、新しいタイプのリーダーでもある。
経営者とデザイナーという二つの顔をどう両立しているのか? バングラデシュ、ネパールなど多国籍のメンバーをどうマネジメントしているのか? そしてこれからどんなリーダーになろうとしているのか? 山口さんの右腕として経営を支える山崎大祐副社長とともに話を聞いた。

――山口さんは、女性起業家、社会起業家という文脈でスポットライトを浴びることが多いですが、デザイナーとしての顔を持っています。

山口:最近は経営に6割、デザインに4割の時間を割いています。以前は会社の立ち上げに追われていて、デザインをする時間なんてありませんでした。最近は会社が安定してきて、いろんな素材を使ったり、生産用の機械も買ったりと、デザインの可能性が広がってきています。会社が軌道に乗るにつれて、デザインにかけられる時間や資金も増えてくる――そこの繋がりがとても楽しいです。

――デザイナーの比率が上がってきたのはいつごろからですか。

山口:2010年の秋・冬シリーズに、山崎が「そろそろ好きなものを作っていいよ」と言ってくれたときです。それまではお客さんの意見を店舗から吸い上げるのに必死でしたが、「ワンシーズンだけ、チャレンジングなことをやってみて」と言われて、コンセプト作りに半年かけました。

そこで作ったのが「花びら」というシリーズです。バッグとしてはとてもシンプルですが、縫製の糸を全部取るとミズバショウの形になります。「なぜバングラデシュで作らなければならないのだろう」というテーマを突き詰めていったとき、バングラの国花であるミズバショウ(シャプラ)に自然と行き着きました。

――実際に発売してみての反響は?

山口:発売後の1週間は、売れるかどうか心配で、ずっと日報で何個売れたかをチェックしていました。そんな日々をなんとか乗り切って、今ちょうど5シーズン目です。今では、「花びら」のようなコンセプトラインと呼んでいるシリーズが、売り上げのおよそ半分を占めるまでになりました。

山崎:当初、コンセプトラインは「売れなくていい」という意気込みで始めたのに、出すたびに大ヒットしています。誤解を恐れずに言えば、顧客の声を聞きながら、ものを作るのはデザイナーとしては楽です。しかし、何もないところから面白いものを作るのはすごく難しい。

そこが山口といつもぶつかるところです。山口が顧客のほうを向きすぎてしまうので、僕が「向くな。忘れろ」とよく言います。

山口:経営者として頑張れば頑張るほど、お店寄り、お客さん寄りになります。だから、デザイナーとしてはもう分裂気味ですよ(笑)。

――日本にずっといて、ファンの人たちとずっと会っていたら影響されすぎてしまいそうです。

山口:そうだと思います。

山崎:電気もないような途上国に行くと、パソコンも使えないので、夜に一人でいると、考える以外にすることがありません。そういうときに生まれるものが結構良いものだったりします。

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