GAPが到達できなかった形に挑戦する

柳井氏後継候補の1人 堂前 宣夫(下)

堂前 宣夫
ファーストリテイリング グループ上席執行役員
堂前 宣夫
1969年、山口県生まれ。93年東京大学大学院・電子工学修士課程修了。同年4月マッキンゼーアンドカンパニーインク入社。98年9月ファーストリテイリング(FR)に転職。29歳で役員に抜擢され、99年フリースブームをサプライチェーンの構築から支える。04年11月FR取締役副社長、ユニクロUSA CEO 。現在はFRグループの上席執行役員。10年7月からユニクロの米国、欧州事業の統括責任者を務める。

残念ながら、05年の米国初進出は、ほろ苦いものになった。アジアと違い、米国はGAPを筆頭に、カジュアル衣料のライバルはごまんといる。「売れなかった。有名なSCモールで、立地は最高だとされていたのですが、あとから聞いたら売れない所だったんです。1日目、2日目の売り上げだけは健闘したのですが、その後が全く続かなかった。家賃も高く払いすぎてしまいました」。文字通り進出の「家賃」は高かった、ということか。ニュージャージーの店は、結果的に翌06年撤退という苦い経験を味わうことになった。

大失敗から生まれた米国の旗艦店

しかし、このニュージャージーの失敗が思わぬ形で、その後のFRの海外戦略を変える転機となる。初の「グローバル旗艦店」であるニューヨーク、ソーホー地区への出店だ。「ニュージャージー店舗のオープンから2週間が経過しようというころ、たまりにたまった在庫をどうにかしなければならなくなった」。堂前は失意の中、ソーホーの通りをブラブラと歩く。

その時「たまたま裏通りで70~80坪くらいの空き物件を見つけた」。ひらめいた堂前は、その場所に急きょテンポラリーショップをオープンすることを決断する。そこからは早かった。「急なオープンでしたから什器なんかは昔のユニクロで使っていたエレクター什器という、金属製のものを急ピッチでパタパタと組み立てました。そこで在庫のカシミア39.9ドルを販売したら意外にも当たって、これはいけると確信をした」。

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