ペッパーの父が挑む、「癒やしロボ」の進化形 「手を温かく」おばあさんの一言がきっかけに

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秋葉原にあるGROOVE Xのオフィス。林要氏はゼロからの出発を心から楽しんでいた(記者撮影)

「どこでも新しいことがあればやってみたい。ソフトバンクがベストパートナーであればいいと思っている」――。かつてそう語っていた男はやはり、新天地に飛んでいた。

2014年6月、ソフトバンクが世に送り出した人型ロボット「ペッパー」。おしゃべりで毒舌、ダンスもこなす明るいキャラクターでたちまち人気者になった。最近でも各種イベントに加え、量販店の店頭や商業施設、銀行、鉄道の駅など、さまざまな場所で活躍中だ。

その開発リーダーを務めたのが林要(はやし・かなめ)氏。トヨタ自動車でスポーツカーやF1チームの開発に携わった異色の経歴の持ち主だ。2015年6月にペッパーの一般発売にこぎつけた後、同年9月にソフトバンクを退職。その後は目立った活動を控えていたが、今年3月、イベントに登壇し、自ら設立した会社で新たなロボットを開発すると打ち出したのだ。

孫正義社長の夢を支えた「ペッパーの父」。今度はどんなロボットを作るのか。そして彼はなぜ、ソフトバンクを去ったのか。

ものづくりベンチャーが集う秋葉原で開発

東京・秋葉原駅近く、ビル10階のシェアオフィス。ここに林氏が代表を務めるロボット開発ベンチャー「GROOVE X」(2015年11月設立)がある。社員は数人と少なく、外部の協力スタッフを含めても20人程度。10代の高専生アルバイトから大手企業を定年退職した60代のベテラン社員まで、年齢層は幅広い。エンジニアもハード系、ソフト系などとさまざまだ。ちなみに、ソフトバンク出身者はいない。

ペッパーは林氏にとってわが子のような存在。「尖った使い方をすると抜群の効果がある。うまく軌道に乗せてほしい」(撮影:今井康一)

ほとんどの社員はロボット開発の経験がないが、こだわりはかなりのものだ。ロボットの繊細な動きを実現する小さなモーターから素材まで、町工場などと協力して一から開発している。林氏は「世界でも見たことがないようなモーターが回っている。下町ロボットですね」と笑う。

秋葉原を拠点としたのには理由がある。入居するのは動画配信大手のDMM.comが手掛けるベンチャー支援拠点「DMM.make」。工作機械のマシニングセンタや電波の影響を受けないシールドルーム、熱衝撃試験機など、さまざまな機材がそろうスペースがあるため、ものづくり系のベンチャーが集まっているのだ。GROOVE Xもここで試作機やソフトの開発を行う。ほかのベンチャー関係者に開発を手助けしてもらうケースもあるという。

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