熊本地震で寸断した「九州新幹線」復旧の行方 全線開業5周年の祝賀ムードが一転したが…

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熊本駅に入線する鹿児島中央発・新大阪行き「みずほ608号」。全線運行再開が待たれる(2016年3月撮影)

九州新幹線・鹿児島ルート(博多-鹿児島中央間、256.8km)は2016年3月12日、全線開通から5周年を迎えた。地元の足として、また、山陽新幹線に接続する「西日本の足」として利用が定着し、沿線各地はポスターやフラッグを掲げて節目を祝った。

だが、約1カ月後の4月14日以降、群発地震「平成28年(2016年)熊本地震」が発生し、最大で地震規模マグニチュード(M)7.3、震度7に達する地震群が、熊本県や大分県に甚大な被害を及ぼしている。九州新幹線も大きなダメージを受けたが、新水俣〜鹿児島中央間が4月20日、博多〜熊本間が同23日に運行再開を果たした。残る熊本〜新水俣間については、月内復旧の方針が報じられている。

筆者は今年3月、開業5周年を迎えた九州新幹線の沿線を取材し、その結果を4月25日発売の「週刊東洋経済増刊号」向けに執筆した。さらに、東洋経済オンライン用に文章をまとめようとしていた矢先、一連の地震が発生した。増刊号向けの改稿は間に合わなかったが、本稿では、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げ、被災地に1日も早く平穏が戻ることを願いつつ、九州新幹線の現状について、4月24日の時点でまとめてみた。

回送列車が全車両脱線

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4月14日午後9時26分、熊本市中心部から約14km南東の御船町(みふねまち)付近を震源とする、M6.5の地震が発生した。熊本県中央部を北東から南西に横切る活断層帯「布田川(ふたがわ)・日奈久(ひなぐ)断層帯」のうち、日奈久断層が活動した、と後に判断された。震度7の揺れが、熊本市の東隣・益城町(ましきまち)を襲い、九州新幹線が走る熊本市や玉名市では震度6弱を観測した。

熊本駅から南方の熊本総合車両所へ向かっていた九州新幹線の800系車両(6両編成)が、駅の1.5km南で脱線。回送車だったため乗客はいなかったが、48ある車輪すべてが脱線した。また、各社報道によると、ほかにも新玉名〜熊本間などで営業運転中の列車3本が緊急停止したが、乗客に大事はなかったようだ。九州新幹線は全線で運休。一体化して運用している山陽新幹線も地震発生直後に小倉〜博多間の運転を見合わせたが、間もなく運行を再開した。

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