日銀はもはや、円高に対して無力に等しい 為替を楽観している製造業を株安が襲う

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円高にはもやは打つ手なしか (写真:大隅 智洋)

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昨年8月に1ドル=125円台だった円相場がそれ以来、大幅な上昇傾向を示してきたことは、3つの点を証明している。まず、日本銀行は円の価値を制御できない。次に、最高の経済専門家でさえ、比較的長い期間にわたって信頼性の高い円相場を予測できない。そして、円と日本の株価の運命が密接に絡み合っている点だ。

黒田東彦氏が2013年3月に日銀総裁に就任した際、市場は彼が多額の紙幣を発行するだけで簡単に円安にできると信じていた。黒田氏の金融政策はその後約2年間機能したかに見えたが、それは単に、通貨トレーダーが予想を立て、そうなるように動いたからだった。

彼らは日銀が円相場を安くする力を持っているとの誤った説を信じたため円を売った。正確には、彼らが円を売ったからこそ円安になった。日銀は市場への資金供給を続け、今年2月にはマイナス金利政策も導入したが、円高基調は続き、4月に入り110円の大台を割って推移している。

為替市場では往々にして、経済のファンダメンタルズよりも投資家の心理が相場に影響する。

焼け石に水

投資家や投機筋による円の通貨取引量は莫大だ。日本の資本流出入額の約15倍、日本の輸出入の合計の約150倍にも上る。そのため、いくら国が為替介入して円レートを操作しようとしても、難しいのが現状だ。黒田総裁もかつて財務省で財務官を務めていたため、為替操作の難しさは熟知しているはずだ。

実際、為替見通しについては、専門家でさえ予想を相次ぎ修正している。たとえば、みずほ銀行は半年前、16年12月時点の予想を1ドル=116円としていたが、3月に1ドル=108円に修正した。JPモルガンも1月、円は16年中に1ドル=110円台で推移し、以降も円高になると予測していたが、2月中旬になって、長期的に見れば公正価値は1ドル=95~105円の範囲内にある、との判断に変えた。

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