日清「バカやろう」CMの謝罪騒動が示す皮肉 ネットとお茶の間の反応は大きく違った

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テレビ関係者が、かつての「『天才たけしの元気が出るテレビ』(日本テレビ系)のような過激な番組は今の時代はもう不可能」と嘆いているシーンにはよく遭遇しますし、広告業界関係者が、企業のテレビCMが批判を恐れてどんどん無難でつまらない表現になっていく昨今のトレンドを嘆く話もよく聞きます。

そんな中で、今回の日清のテレビCMに対して、「さすがカップヌードル、良くやった」「攻めの姿勢で面白い」という好意的な見方が出ていたのは非常に良くわかりますし、今回の放送中止に対してショックを受けている人が多いことも容易に想像できます。

ただ、冷静に今回の騒動を振り返ってみると、今回の放送中止はいわゆる典型的なネット炎上とは異なっているのではないか?というのが私の印象です。

大きなギャップが原因?

つまり、今回の放送中止は、テレビCMならではの高いリーチ率が生み出してしまった独特なケースともいえるのではないかということです。今回の日清食品HPのお詫び文に添えられていた「今回のテレビCMのテーマであります『CRAZY MAKES the FUTURE.』のメッセージを伝える『OBAKA’s UNIVERSITY』シリーズは、若い世代にエールを送ることが主旨」を読み解く限り、ターゲットにしたかった層と実際にテレビCMを見ていた多数の視聴者には大きなギャップがあったのでは、とも推察できます。

いわゆるネット炎上系の事例というのは、最初に個人やネットメディアで企業の不祥事や企業の行為に対する批判の指摘がなされ、それが火種となってツイッターや2ちゃんねるの掲示板などで話題が盛り上がり、それをさらに既存メディアが取り上げていくことによって騒動が大きくなり、最終的に企業が謝罪に追い込まれる、というスパイラルをたどることが通常です。オリンピックエンブレム騒動や「保育園落ちた日本死ね」騒動などが象徴でしょう。

ただ、今回のカップヌードルのケースは、少なくともツイッターの投稿数などの推移を見る限り、放送開始前後でみるとツイート数は放送開始前が1日1000件前後、直後に同2000件前後まで増えたものの、そこからは右肩下がりでした。逆に日清食品のテレビCM取り止めが明らかになった4月9日には6000件を超えており、ネットでは放送中止という判断によってかえってここで炎上したようなものです。

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