燻る消費増税延期論、財政再建公約は反故? 増税延期=同日選のシナリオが消えない

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前出のフェルドマン氏が、必要な財源調達額は60兆円との前提で講演会の参加者らに財政再建の進め方を尋ねたところ、「消費税率16%と社会保障費の35%削減」と「消費税率22%と社会保障費の23%削減」という組み合わせを支持する人が多かったという。増税だけでなく、より一層の歳出削減が必要と考える人が増えている。

格下げで国債が売られるリスクも

29日に成立した16年度予算案では、改善されたとはいえ国債依存度は35.6%。消費増税を先送りすれば、20年度の基礎的財政収支黒字化の政府公約は実現不可能だ。

メリルリンチ日本証券の大崎秀一・チーフ金利ストラテジストは「日本国債の格下げリスクがある。格下げされても安全とみられ、逆に国債が買われることもあったが、最近は海外勢の買いが増加していることもあり、一時的に売られるリスクもある」と言う。日本国債の格付けは現在シングルAだが、トリプルB格に引き下げられれば担保価値が下がり、国債の売却を迫られる投資家も出てくる。

新たに発足した民進党の岡田克也代表は29日、消費増税の可否について「判断するのは秋」と述べたが、安倍自民党との違いを打ち出す、いいチャンスなのではないか。衆参同日選になるにせよ、ならないにせよ、先々の負担も含め、消費増税の可否を国民に問う。そんな機会がこの夏、やってくる。

「週刊東洋経済」2016年4月9日号<4日発売>「核心リポート03」を転載)

 

 

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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