日本国内で家計消費が伸び悩んでいる原因は何か。消費税の増税によるもの――という見方は、正しいのだろうか。
消費税増税が家計消費に与える効果は、単純なように見えるがそうではない。所得税増税の効果と同一視することはできない。
所得税増税の効果は、直感的な理解をそのまま当てはめることができる。もし所得税が増税されたら、昨年と同じ税引き前所得を稼いでいれば、増税された分だけ手取りの所得が減る。だから、手取り所得が減るのに見合う形で、家計消費が減る。しかし、ここでは、所得税増税がモノの値段に直接影響を与えることはない。直接的な効果でみれば、所得税が増税されても、100円のパンは100円のまま変わらない。
影響及ぼすルートが異なる所得税と消費税
消費税の増税の場合はどうか。消費税が増税されても、昨年と同じ税引き前所得を稼いでいれば、手取りの所得は今年も昨年と同じままである。しかし、モノの値段が変わる。消費税率が5%から8%に引き上げられれば、税込みで105円のパンは(消費税を完全に転嫁すれば)108円になる。物価はこの効果だけで約2.9%(=(108-105) ÷105)上昇する。こうしてモノの値段が上がることを通じて、手取りの所得が同じであっても購買力が落ちることから、家計消費が減る効果が生じる。
要するに、家計の購買力が減ることによって家計消費が減るという効果には違いないが、所得税は手取りの所得(可処分所得)を直接減らすルートで影響が及ぶのに対し、消費税は物価を上げるルートで影響が及ぶ点に違いがある。確かに、物価変動を調整した可処分所得である実質可処分所得を減らすという意味では、所得税も消費税も同じである。しかし、効果が及ぶルートが異なる点は、デフレ脱却をにらんで重要なポイントとなる。
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