伊勢志摩サミットで「財政出動」合意は難しい 主要国にはそれぞれ応じられない事情がある

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16日の国際金融経済分析会合でのスティグリッツ・コロンビア大教授(左)と日銀の黒田総裁(写真:読売新聞/アフロ)

3月中旬は、2017年4月に予定通り消費税率を10%に引き上げるかをめぐり、さまざまな見解が出され、注目を集めた。論議の初期段階については、本連載の拙稿「消費増税『再先送り』は問題を何も解決しない 『世代間格差』をまだ放置するつもりなのか」でも触れた。

与党内や首相官邸周辺からは、消費増税の再延期のみならず、補正予算を組んで年内に財政出動を求める声も出始めている。現時点で来年度予算案は、まだ参議院で審議中のため、この時点で補正予算の話をすれば、野党から予算案に不足があるなら組み直して予算案を出し直せと言われかねない。だから、財政出動を欲する与党議員とて、来年度予算案が成立するまでは自重しているだろう。これが成立すれば、今夏の参議院選挙もにらんで、財政出動の声が一気に高まるかもしれない。

伊勢志摩サミットでの日本の役割とは

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3月16日に首相官邸で国際金融経済分析会合が開催された。その席上で、スティグリッツ・コロンビア大教授は、日本は5月の伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)の議長国として、各国が景気を刺激すべく財政出動に乗り出すよう、リーダーシップを発揮すべきだとの意見を述べたという。これは、各国経済が低迷しているのは、国際競争の激化や規制緩和などにより経済格差が拡大し、中間層の所得が下がり総需要が伸びづらくなったことが背景にあるとみているからだ。

ちなみに、スティグリッツ教授の反緊縮財政論の含意は、本連載の拙稿「日米で違いすぎる『反緊縮財政』を巡る議論 大御所が見る米国経済『利上げ後』のゆくえ」にも記したように、市場の失敗の是正が主であって、(してもいない)家計消費の底割れ対策が主ではない。

では伊勢志摩サミットで、安倍晋三首相は各国で財政出動を行うという内容をサミット首脳宣言に盛り込むことができるだろうか。

サミット参加国には、財政出動においそれと応じられない事情がある。
キャメロン首相が率いるイギリスは、次期首相を目指すとうわさされているオズボーン財務大臣が主導して緊縮予算を編成し、3月16日に議会に来年度予算案を提出した。この予算では2019年度までに財政収支を黒字化する目標を堅持した(利払い費を含まない基礎的財政収支ではなく、国債を新発しないことを意味する財政収支の黒字である)。

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