EU離脱か残留か、イギリス国民投票の衝撃度 離脱のリスクを過小評価してはならない
2月18・19日の欧州首脳会議で、英国政府が求めていた欧州連合(EU)の改革案について、合意したことを受け、キャメロン英首相は20日、英国のEU加盟の是非を問う国民投票を6月23日に行う方針を表明した。
国民投票の質問は「英国はEUのメンバーにとどまるべきか、EUから離脱すべきか」の二者択一形式。首脳合意を受けて首相は「改革後のEUにとどまることで英国はより安全で、より強靭で、より豊かになり、離脱すれば経済や安全保障にとって脅威になる」と言及。英国がEU内で"特別な地位"を獲得した成果を強調し、英国民に残留への支持を呼びかけた。
産業界や金融界の多くもEU残留を支持している。だが、キャメロン政権を支える30名の閣僚のうち6名が英国のEUからの離脱を支持することを表明したほか、国民的な人気と知名度を誇り、次期首相候補にも名前が挙がるロンドン市長のボリス・ジョンソン氏が離脱支持に回るなど、英国民や閣僚内の意見は二分している。
英国民投票の結果は予断を許さない
合意したEU改革案は、以下のとおりだ。
(1)経済ガバナンス:英国に対し、単一通貨ユーロの適用除外を認めることを再確認、経済通貨同盟を強化する新たな施策に対してEUに追加協議を求める緊急措置を認める、ただし、英国が要求した拒否権は認められない。(2)競争力強化:英国の求めに応じて規制緩和と競争力強化を約束。(3)国家主権:英国に対してさらなるEUの政治統合にコミットしない“特別の地位”を認める、新たなEU法令に対してEU加盟国の55%以上の反対があれば否決できる。(4)移民政策:英国の社会保障制度を脅かすと判断された場合、EU域内からの移民の流入や福祉給付を制限できる緊急措置を最長で7年間適用する(延長は不可)、ただし、福祉給付の制限は4年間で漸進的に緩和される、など。
改革案は英国以外の国民投票で批准する必要はないが、欧州議会で合意する必要がある。EU条約の改正が必要な改革項目については、次の条約改正時に同時に行なうとして、難航が予想される改正手続きをひとまず回避した。
各種の世論調査では残留派と離脱派が拮抗している。国民投票の行方を巡っては様々な調査会社が世論調査を行っており、「残留」が優勢に出やすい調査、「離脱」が優勢に出やすい調査など千差万別だが、昨夏に欧州難民危機が深刻化して以降の全般的な傾向としては、離脱派が勢いを増している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら