松下幸之助は、部下を感動させながら育てた

感動なくして部下は育たない

松下幸之助は、部下の発言に対して「わしもそう考えていた」とは言わなかった(撮影:高橋孫一郎)

あるとき話をしているうちに、松下幸之助が「今度、こういうようなことをやったらどうかと思っとるのやが、きみ、どや、どう思う?」と言う。「結構じゃないですか」「きみもええと思うか」と、話が弾んでいた。

そこへたまたま松下電器の役員幹部がやってきた。そして面白いことに、さっき松下が「これ、やったらどうかな」と言っていたことを、その幹部も提案したのである。

私は「そうそう、さっき話していたことだな」と、そばにいて心中にんまりしていた。

しかし、松下はそのとき、ついさっきまで話していたという素振りを少しも見せずに、首を横にしてじっと相手の目を見ると、「うん、きみ、なかなかいい考えやな。それ、やろう」「きみの考えたこと、すぐにやろう」と言うのである。

「わしもそう考えていた」とは言わなかった

この連載の過去記事はこちら

自分も同じことを考え、つい今しがたまで話していたのだから、「きみの考えたこと」ではなく、「わしもそう考えていたんや」と言いたくなる。しかし、松下はそんなことはおくびにも出さなかった。

「きみの考えたことをやろう」と言われたその役員は当然、今この瞬間に自分の考えが採用されたと思うから、「よし、俺がやろう、俺の責任でひとつやってやろう」とやる気を出している。うまい、そしていいやり方だと私は感心したものである。

次ページ感動させることが育てること
関連記事
Topic Board トピックボード
人気連載
Trend Library トレンドライブラリー
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

Access Ranking
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!

※過去48時間以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※週間いいね数のランキングです。

トレンドウォッチ
行き詰まる東電支援<br>原発最後の選択

賠償費用も廃炉費用も想定から大きく上振れし、東電支援スキームは破綻の瀬戸際。東電の発電所を売却し、その代金を賠償や廃炉費用に充て、東電を送配電会社に再編する構想が浮上。