松下幸之助は、部下を感動させながら育てた

感動なくして部下は育たない

松下幸之助は、部下の発言に対して「わしもそう考えていた」とは言わなかった(撮影:高橋孫一郎)

あるとき話をしているうちに、松下幸之助が「今度、こういうようなことをやったらどうかと思っとるのやが、きみ、どや、どう思う?」と言う。「結構じゃないですか」「きみもええと思うか」と、話が弾んでいた。

そこへたまたま松下電器の役員幹部がやってきた。そして面白いことに、さっき松下が「これ、やったらどうかな」と言っていたことを、その幹部も提案したのである。

私は「そうそう、さっき話していたことだな」と、そばにいて心中にんまりしていた。

しかし、松下はそのとき、ついさっきまで話していたという素振りを少しも見せずに、首を横にしてじっと相手の目を見ると、「うん、きみ、なかなかいい考えやな。それ、やろう」「きみの考えたこと、すぐにやろう」と言うのである。

「わしもそう考えていた」とは言わなかった

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自分も同じことを考え、つい今しがたまで話していたのだから、「きみの考えたこと」ではなく、「わしもそう考えていたんや」と言いたくなる。しかし、松下はそんなことはおくびにも出さなかった。

「きみの考えたことをやろう」と言われたその役員は当然、今この瞬間に自分の考えが採用されたと思うから、「よし、俺がやろう、俺の責任でひとつやってやろう」とやる気を出している。うまい、そしていいやり方だと私は感心したものである。

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