就活には大人のエゴとズルさが詰まっている 就活生は企業の本音を見抜き、そして楽しめ

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どうせなら就活は楽しんだ方が良い

常見:最後に就活を迎える皆さんへのアドバイスを。

今里:よく大学のキャリアセンターなんかで配布される、「就活の手引」みたいな冊子がありますけど、就活支援企業がこういうものを使って、就活生をナビゲーションしてあげるのはいいと思うのですが、ほとんどの学生がこれで動いてしまうことがむしろ怖い話だと思うんです。就活生をサポートしているようで、実は彼らの選択肢をすごく狭めているんじゃないかと。このタイミングになって「あ、そうなんだ」と思うのが動く学生が大多数なのだろうけど、それを良し、とするのは少し違う気がします。

「就職するって、こういうやり方もあるよ」「世の中を知るにはもっと他の方法もあるよ」とか。仕事探しにはたった一つの正解なんてそもそも無いんですから、もっと自由に多様な就職活動が出来るのか、大人はどういうふうに学生を世の中に送り出していくかを、学校や企業が主体的になって、選択肢を提供していければいいなと思います。ですから、世の中で働く私たち大人、就活の先輩としてちゃんと伝えるべきですよね。

常見:選択肢の多様性と、出会うための手段と、そのリスクくらいを教えてあげるべきだと思いますね。別にキャリアセンターが言うことがすべてではないし、企業を探す手段は就職ナビだけじゃない。

今里:就活には、いろんな手段がある。もっと積極的に世の中に「会いに行こう!」と考えて欲しい。いろいろな立場のひとと会える最大の機会が就活なわけで、いったん会社に入ったら、会いに行くにも会いに行けないですよ。営業のひととして企業に飛び込んでも門前払いされるんだから。

それも楽しいし勉強になるんですけど。今のうちにいろんな会社のいろんなひとに会える最大の機会なんだから、これは楽しまない手はないと。3年生になってからこのタイミングじゃなくてもいいわけです。1年生、2年生でも、望めばそれができるんだから。

常見:ソニーとパナソニックの人、電通と博報堂の人に両方に会える機会ってなかなかないですよね。

今里:ないです。就活イベントもおもしろい機会だと思うんです。たくさんの企業人事の担当者が集まるわけじゃないですか。人ごみで大変だとは思うけど、楽しんでほしいですよね。

常見:そうです。人事のひとたちを観察するだけでもすごくためになるはずですね。言うなれば、人事の動物園(笑)。余談ですけど、学生の前にキリっと立っている人事も、バックステージにいくとグッタリしていますからね(笑)。合同説明会の舞台裏では、人事が仮眠を取っていたり、会社に電話して接触数を報告していたり。先ほどまでキリっと清純そうに話していた女性人事担当者が喫煙コーナーでスパスパとタバコを吸っていたりする(笑)。

今里:「就活で社会を見に行こう」と考えればよいですよ。合同説明会から始まるって、ある意味では煽りもあるかも知れませんが、これはこれで、楽しんでほしい。楽しめるためにはそれまでの準備が大事だから、職業観の手前の自己分析なり、業界研究や企業研究なんかの社会勉強なり、就職活動に入っていく前段階で、早いタイミングから学生自身が考え始められるか、そこが重要ですよね。学校が責任や機会を担うことが多いのだろうけど、社会全体で大人としてどれだけ早い多様な機会を与えられるかですよね。

常見さんがいろんな場面で情報を発信するのもそうだし、われわれのようなサービスでそれを実現することもそうですが、いかに多様な可能性を広げておくか、ですね。

常見:企業の人事担当者は学生以上に不安ですよ。「どうやって未来の仲間と出逢うのか?巡り会うのか?」。学生さんと同じように悩んでいるんですよね。この局面だと就活はよく批判されるし、私自身も至らぬ点がいっぱいあると思っていますけど、学生さんは就活のこの数ヶ月間いろんなひとと出会って、自分の可能性が広がると捉えると、すごくおもしろいと思う。

今里:そうですね。

常見:とにかく会いに行こうと。

今里:はい、「行動する。会いに行こう」です。「就活は人間を熱くする!」

常見:いいですね!今日はありがとうございました。

今里:ありがとうございました。

私にとって、今年は就活20周年の年である。そう、20年前、私は就活生だった。はっきり言って茶番だった。夜中にリクルーターから電話がかかってきて腹が立ち、待ち合わせに行くと、カフェの前でリクルーターの若手社員がみんな目印に『ベースボールマガジン』を持っていてなんだかなと思った。もう退職しそうな50代社員に「10年後、どうなっていたい?」と聞かれ「あなたの10年後って・・・」と言ってやりたくなったこともある。
とはいえ、大人の世界を覗けたこと、尊敬できる先輩社員たちと出会えたことは良い経験だったと思う。一気に大人になったような。
くだらないことも含めて大人の世界の現実を知ることができるのが、就活である。まあ、辛いことも多いと思うが、大人たちも学生たちに逃げられないかどうか不安で不安でしょうがないわけで。
大人と会いに行く勇気、大人の世界を覗く勇気を大事に、まあ、焦らず楽しくいこう。
この記事を読んでいるのは、おそらく、就活生よりも、社会人の読者が多いことだろう。若者が就活の相談にやってきたら、ぜひ時間をつくてほしい。そういう育てる、助ける連鎖で社会は動いていて欲しいのだ。

 

常見 陽平 千葉商科大学 准教授、働き方評論家

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つねみ ようへい / Yohei Tsunemi

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年4月より現職。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など著書多数。

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