ショッピングモールは下流化の象徴じゃない 東浩紀×大山顕「これは世界統一の文法だ」

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毛利さんの本では、セキュリティが働いておらず、ホームレスも受け入れられるような管理されていない空間こそがもっとも公共的なのだという議論ばかりがなされている。けれども、ぼくはそれこそ狭い見方だと思うんです。

3つの可能性

ではショッピングモールにはどんな可能性があるのか。思想用語で整理すると、ポイントは3点かなと思います。「新しいコミュニティ」「新しい開放性」「新しい普遍性」です。

コミュニティについては、郊外やネットといった「現代的なコミュニティ」と、駅前商店街に代表されるようなおじいちゃん、おばあちゃんの「顔が見えるコミュニティ」との対立が重要です。コミュニティというと前者だけが問題視されるけど、それでいいのか。

開放性については、監視カメラに囲まれ空調も整っている「セキュリティ」の空間と、誰も管理しておらずホームレスも入れるようなアナーキーな空間のどちらが本当に「開放的」なのか、あるいは誰にとって開放的なのかという問題。最後に普遍性というのは、グローバル化がつくり出した世界中でどこでも同じようなサービスが受けられる現状を、新しい普遍性として捉えられないかという論点。思えばショッピングモールというのは、人々が政治も文化も宗教も共有しないまま、互いに調和的に振る舞い、なにかを共有しているかのような気になれる空間です。

とはいえ、こういう話ばかりしていると抽象的な議論になってしまうので、もっと具体的な話をしていきましょう。

まずは、ぼくが実際に見てきた印象深いショッピングモールを、写真を交えて紹介できれば。三浦さんや毛利さんは国内の空間を意識されているようですが、僕がショッピングモールについて考えるとまず思い浮かぶのは海外のモールです。僕は海外に行くとたいていショッピングモールを回るのですが、なかでも紹介したいのは、シンガポールのヴィヴォシティ、ドバイのドバイ・モール、ミネアポリスのモール・オブ・アメリカの3つです。

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