ショッピングモールは下流化の象徴じゃない 東浩紀×大山顕「これは世界統一の文法だ」

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現首長のムハンマドは、ドバイを代々支配するマクトゥーム家の9代目にあたり、実業家や馬主としても著名(撮影:東浩紀)

この写真の人は誰かと言うと、彼がドバイの首長です。王様ですね。

王様と言っても政治だけやっているわけではなく、建築会社や不動産会社を持っていて、その会社がモールをつくっている。だからどこも彼の写真だらけ。

次の写真を見てください。9月はちょうどラマダーンの時期で、この時期にはイスラム教徒は日の出から日没まで食事を取ることができないので、フードコートもイスラム教徒向けと異教徒向けに分けられます。

ラマダーン中、ドバイ・モールのフードコートでは多くの店舗が営業を休止する。イスラム教徒以外は食事を取れるため、区画は扉で隔てられている(撮影:東浩紀)

このように、モール内に王の肖像が飾られたり、フードコートがラマダーン対応だったり、ドバイ・モールは日本やシンガポールのモールとはいろいろ違う。

けれども、それ以外はむしろ完璧に同じ。入っているブランドは同じだし、内装のコンセプトも同じ。宗教や政治体制の違いなどまったく存在しないかのようでした。そこに強い印象を受けました。

ロウアーミドルのユートピア

モール・オブ・アメリカ入口。設計にはジョン・ジャーディ(後述)が携わっている(撮影:東浩紀)

そして最後に紹介したいのが、モール・オブ・アメリカです。ここはあえて言えば「ロウアーミドルのユートピア」。このモールは、規模としてかつて世界一でした。

遊園地の「ニッケルオデオン・ユニバース」は、27種類のアトラクションが用意された本格的なもの(撮影:東浩紀)

構造的にいちばんの特徴は真んなかが巨大な遊園地になっていること。野球場跡地をモールにしたので、中心部がぽっかり空いて遊園地になっているんです。

遊園地があるのでたくさんの人でごったがえしているのですが、よくよく観察してみるとあまり金持ちはいない。有色人種で子だくさんなひとが多い。

貧困層ではないですが、中産階級の下のほうという感じですね。ミネアポリスの街中とは明らかに客層が違いました。

大山:ここも行きたいと思っていました。ロウアーミドルというところにも驚かされます。

『幻冬舎新書』編集部
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