円高はいったいどこまで進んでしまうのか 現実味を帯びてきた100~105円のライン

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そこで浮上してくるのが、政府と日銀が協力して為替市場で介入(覆面介入になるかどうかは分かりませんが)を実施するということです。もちろん、私は防衛ラインとして110円が妥当であると考えていますが、実際の防衛ラインがどの程度になるのかは分かりません。

2月中旬~3月下旬にかけて、日本企業の円買い需要は否が応でも高まっていきます。日本企業の多くが今年も円安が続くと見ていたため、決算に向けた円買いを手当てできていない企業が多いということです。そういった点を考えると、政府・日銀は円高を食い止めるために、米国から批判を受けるまでは為替介入を繰り返すしかないのではないでしょうか。

日本の銀行が取る選択肢は

しかしその間にも、銀行の収益基盤がマイナス金利の導入により脆弱なものとなり、日本経済は徐々に蝕まれていく可能性が高まっています。銀行の収益基盤を弱めるようにした結果、中小零細企業への貸し渋りを招くか、リスク資産への投資を増やすか、銀行の経営方針は大体この二つの選択肢に絞られるからです。

おそらく、日本の銀行は前者の選択肢を取るだろうと思われます。後者の選択肢を取った欧州の銀行は、今ではドイツ銀行を筆頭に経営不安を囁かれるほどの損失を抱えてしまっています。守りに強い日本の銀行が、欧州の銀行の真似をするとはどうしても考えられません。

いずれにしても、為替介入が実施されるようになり、それが続けられているうちは、円相場の下限は110円あたりになる可能性が高いと考えられます。しかしその一方で、為替介入が実施されない場合は、円高は100円~105円のレンジまで進んでもおかしくないと考えておいたほうが無難であると思われます。

中原 圭介 経営コンサルタント、経済アナリスト

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なかはら けいすけ / Keisuke Nakahara

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。
主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『日本の国難』『お金の神様』(ともに講談社)、『ビジネスで使える経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点から日本の将来を考える』を好評連載中。公式サイトはこちら

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