円高はいったいどこまで進んでしまうのか 現実味を帯びてきた100~105円のライン

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12日の日経平均は1万5000円割れとなり、ドル円も大幅な円高で推移(撮影:尾形文繁)

『円安終焉へのカウントダウンが始まった』(2015年12月14日)で予測しましたように、米国の利上げをきっかけにして、年初からの円高傾向が鮮明になってきています。

多くの識者の方々の解説を伺っていると、円高進行の原因を「世界経済への先行きへの不安」や「地政学リスク」などと答えているようですが、そのような不安やリスクはすでに昨年の秋口から顕在化していたので、これらの解説は後付けの講釈にすぎないといえるでしょう。

端的にいえば、円高トレンドに転換した本質的な要因は、ドル円相場に大きな歪みが生じていたところに、米国の利上げが引き金となって、その歪みを修正する動きが起こるのは当然であるという話に過ぎなかったのです。すなわち、海外の投資筋の円売りにより、過剰な円安が日本経済の実力以下に進んでしまっていたというわけです。

購買力平価の水準となる100円~105円が妥当

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『やっぱり2016年は円高トレンドの1年になる』(2015年12月30日)では、金利差だけで円安になるという見方は非常に短絡的であると指摘したうえで、円相場の予測はいろいろな要因を俯瞰したうえで総合的に判断することが重要であると述べさせていただきました。その記事では円相場を予測するのに大事な視点を説明していますので、できるだけ多くの読者にご覧いただきたいと思っております。

さて、個人投資家や機関投資家、企業関係者、さらには政治家までもが「円高はどこまで進むのか」と心配し始めています。それと同時に、企業収益への悪影響を懸念し始めています。それでは、円高の進行はどの程度まで進むと考えることができるのでしょうか。

実のところ、私の予測には今のところブレがありません。拙書『中原圭介の経済はこう動く(2016年版)』やこの連載をご覧になっている方には申し訳ないのですが、今でもやはり購買力平価の水準とみられる100円~105円が妥当な水準ではないかと考えております。円相場の大きな流れでは、購買力平価を起点にして3年~5年のスパンで、円高に振れたり円安に振れたりと繰り返しているからです。

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