ドル円は購買力平価の100〜105円めざす

「期待」でなく「不安」を煽ったマイナス金利

11日海外市場で円が急騰し一時110円台も(写真:共同)

日本銀行のマイナス金利導入決定から約2週間が過ぎようとしている。ここまでのところの政策効果に関し整理しておきたい。

最も期待された為替・株への影響は文字通り惨憺たる結果。ドル円相場、日経平均株価ともに年初来安値を大きく更新してしまった。混乱の根幹はあくまで「中国経済減速と原油価格急落」であって、当事国ではない日本の中央銀行が策を弄したところで無力だということが改めて浮き彫りになった。

患部と処方箋がずれている以上、症状の改善につながらないのは当然だ。これと似た構図は2009~2011年、欧州債務危機を巡る混乱の最中で円高が進んだ時にも見られた。当時の白川日銀の断続的な追加緩和にもかかわらず、円高相場は容赦なく続いた。歴史が繰り返された格好である。

そのほかマイナス金利導入後に表れた効果ないしは副作用としては、金融機関の預金金利の引き下げ、MMF(マネーマーケット・ファンド)を筆頭とする一部金融商品の販売停止、日本の国債金利が劇的に低下して、G7国では初めて長期金利がマイナスに沈んだことなどの現象が広がった。

「期待に働きかける」どころか不安を感じさせた

法人のみならず個人にとってもあまりよくない話ばかりが聞こえてくる。1月30~31日に日本テレビと読売新聞が実施した緊急世論調査によれば、日銀が決定したマイナス金利政策について「景気回復につながると思うか」との問いに対し、「思う」との回答が24%、「思わない」との回答が47%に達していた。マイナス金利が適用開始になる2月16日以前に効果を断言することは控えるが、少なくとも今のところは、同政策による「期待への働きかけ」はうまくいっているようには見えない。

個人的な体験談だが、筆者が美容院に行った際、経営者である店長から「今後は銀行に預金すると手数料がかかるようになるというのは本当か」と尋ねられた。同種の質問は金融市場の外にいる知人からも多く受けた。

今回の日銀によるマイナス金利政策は、銀行収益に配慮したこともあって、一足飛びに個人預金にチャージが掛かるような事態にはならない。だが、そのように受け止めている人が少なくないのだとしたら、「期待」を重要な操作変数としている黒田日銀にしては、大きな失策と言わざるを得ない。

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