自然界は独創力を刺激するアイデアの宝庫だ ナイキのデザイナーたちは山羊を観察した

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クリエイティブな思考の持ち主は、自然界から学ぼうとする(写真:涼然 / PIXTA)
人生は一度きりしかない。「お仕着せではないクリエイティブな生き方をしたい!」という願望を持っているビジネスパーソンは多いのではないだろうか。そんな人々を勇気づけて背中を押してくれるのが、先人たちの偉業をまとめた書籍。『「クリエイティブ」の処方箋』(ロッド・ジャドキンス著、島内哲朗訳、フィルムアート社)には、クリエイティブに生きるための発想が、86本の短めの読み物として紹介されている。
東洋経済オンラインでは、86のアイデアのうちのいくつかを紹介していく。第7回は「自然界からのひらめき」。

 

鳥の巣を見てみよう。その構造的な強度と美しさに気づく。では、これを人間向きに応用することは果たして可能なのだろうか? 建築設計ユニットのヘルツォーク&ド・ムーロンはこの挑戦を受け、2008年の北京オリンピックのために「鳥の巣」として知られるメインスタジアムを作った。近年これほど壮麗な建築物にお目にかかるのも珍しいという作品だ。

何千という鋼鉄の「枝」で構築されたファサードを持つこの「鳥の巣」は、泥や羽毛や苔の代わりに透過性の高いパネルが隙間を埋め、断熱材の役割を果たしている。パネル建材は観客を雨風から保護すると同時に、敷かれた芝生に日光を通す。意図的に残された隙間を通して外気が吹き込み、コンコースを通ってスタジアム内部を吹き抜け、屋根の穴から外に出るので、天然の換気口として機能している。

北京を象徴する国際的な建築物を作るという目標は達成された。卵型の格子構造は見る者を幻惑するかのように魅了してやまない。創造的であろうとするためにリスクを恐れないという中国の気概を世に問うた、まさに美意識の勝利だった。その過激な構造をもって、「鳥の巣」は権威的になっ
てしまったモダニズムの法則を破壊してみせたのだ。

自然界からアイディアを学ぶ

仕事の内容にかかわらず、自然に目を向けることで新しい視点を持つことができる。自然はクリエイティブじゃなければ勤まらない。問題解決の達人なのだ。動物も、植物も、微生物も、熟練の発明家であり究極のエンジニアだ。38億年の進化の歴史を経て、自然界は何をすればうまくいくか、
そして何が一番長持ちするか、見極めているのだ。私たちは、何億年もかけて発見された問題解決法に囲まれて生きている。

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