創造力は「知識量」から生まれるものではない

ジョブズは少ない知識を最大限に使った

1998年、iMacを発表するスティーブ・ジョブズ氏(写真:ロイター/アフロ)
人生は一度きりしかない。「お仕着せではないクリエイティブな生き方をしたい!」という願望を持っているビジネスパーソンは多いのではないだろうか。そんな人々を勇気づけて背中を押してくれるのが、先人たちの偉業をまとめた書籍。『「クリエイティブ」の処方箋』(ロッド・ジャドキンス著、島内哲朗訳、フィルムアート社)には、クリエイティブに生きるための発想が、86本の短めの読み物として紹介されている。
東洋経済オンラインでは、86のアイデアのうちのいくつかを紹介していく。第6回は「違いをデザインする」。

 

小包が届いた。うきうきとそれを開けると、中には思いもよらぬものが入っていた。それは14インチ幅の、滑らかな卵型の物体だった。シドニーにあるボンダイの海のような青と白で彩られた殻は、氷のように透き通っているが、防弾ガラスより頑丈だった。

魔法のように軽い滑らかな物体

見たこともないようなこの色彩は、どこか異星の雰囲気を湛えていた。七宝焼きのような外装の下には、中身がぼんやり透けて見えた。継ぎ目や溝といった成型の痕跡は見られず、魔法のように軽いこの滑らかな物体は、工業製品というよりは錬金術で生成されたかのような趣と持っていた。

地球外から来たようにも見えるこの物体は、思わず手で触れて幻ではないことを確認したくもなる。私たちの文明が理解できるどんな技術も超越した、異星の技術で作られたかのように見えた。

箱から出てきたのは、iMac G3だった。発売された1990年代後半、それは確かに宇宙的な存在だった。どのような魔術で造られたのだろうと首を傾げたのは、私だけではなかったはずだ。

スティーブ・ジョブズは、決して豊富ではないデザインの知識を駆使して結果を大きく変えられる男だった。独自性の高いスタイルはアップルの代名詞になった。競合他社が技術的な側面に注力しているとき、ジョブズは外見にこだわった。iMacシリーズが発表されるまで、コンピュータと
いうのは見るも不恰好なものだった。では、どうしてジョブズだけが、あのように違った思考を持つことができたのだろう。

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