上野千鶴子さん「もっと戦略的に生きなさい」 “フェミバージン”の若い女性たちに伝えたい

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フェミニストの高齢化は、前から気になっていた。世代交代はフェミニズムにとって深刻な問題で、数年前から取り組み始めています。今は皆さん、インターネットで情報を得るから、検索エンジンにひっかからないものは、存在しないも同然でしょう。WAN(Women’s Action Network)を作ったのは、若い世代にフェミニストの考えてきたことや活動を伝えたかったから。2009年にNPO法人を立ち上げて、2013年に認定NPO法人になりました。

WANは「男女共同参画社会実現に寄与することを目的として、女性の情報や活動の相互交流の場を提供し、女性のネットワークの構築と、女性のエンパワーメントに寄与する事業を行う」ことを目的にしています。

女のミニコミを電子図書館で保存したり、ジェンダー研究者の最終講義を映像アーカイブにして残したり、フェミニズムやジェンダーに関するイベントや講演を動画撮影して、当日来られなかった人が見られるようにしたりしています。地方の方からはとても喜ばれています。長期的には「WAN女性大学」を作りたい。E-Learningでフェミニズムを学べるしくみを作って、オンラインジャーナルを発行したい、とも考えているの。

自分の両親を見れば、目の前にある問題が見える

■上野語録6:結婚制度の実態は空洞化している
今の世の中、結婚しているほうがありとあらゆる面でトクです。よってたかって、制度を守るほうがトクになるようにしているんだから。だから、わたしが問題にしているのは、制度の空洞化、という、実態のほうです。 

――インターネットでそういう知識にアクセスできるのは大事だと思います。現状、高学歴の女性でも、フェミニズムやジェンダーという概念に触れずに30代を迎えるため、何となくおかしいな、と思ってもやもやしていることがあります。

学校で優等生だった女性には、かえってフェミは関係ないという人が多いですね。「女だから、男だから」とこだわりたくない、と言う。学校にいる間は、差別を経験しないかもしれない。学校はタテマエが通用するところだし、女の子のほうが成績はよかったりする。だから差別はないか、と言ったらそんなことはなくて「ご両親を見てどう思う?」と聞きたくなる。

この年代だとご両親は団塊の世代か少し若いくらいですが、対等な関係を持っている夫婦は本当に少ないでしょう。今の自分じゃなくご両親を見たら、結婚や出産後に女性が経験する差別や理不尽にすぐ気づくはず。目の前にある差別が見えないのかしら。

60~70代は、結婚があたりまえの世代だったけれど、今、結婚しない人が増えているのはなぜか。答えは簡単。上の世代の結婚生活を見て、うらやましいと思わないからではないかしら。若い人たちが、たとえば結婚を選ばない、という消極的な形で示している、今の社会や制度への違和感を、言葉にして表現しているのがフェミニズムと言うこともできますね。

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