新横浜駅発車から10分。広々とした相模平野の田園地帯を抜ける頃、E席側、つまり右前方に個性的な家並みが見えてくる。
丘の上に整然と並ぶ、三角屋根の家々。青、ピンクなど1軒1軒カラフルな色彩で、デザインも統一されている。まるでテーマパークか外国の街を見ているようだ。これは、神奈川県平塚市の湘南日向岡住宅。東急電鉄グループが開発し、1987年から分譲を開始した住宅地だ。
東急建設の広報担当者は、この特徴的なデザインについて「古い話なので、いきさつはわからない」とする。住民などによれば、東海道新幹線の車窓から見えることを意識してデザインされたらしい。
日向岡は、平塚駅からバスで20分あまり。標高67mの高台にあり、眺望は良いものの分譲住宅地として条件の良い立地ではない。一方、南東側の斜面は、東海道新幹線からよく見える位置にある。
日本に一つだけの「謎の看板」
そこで、この斜面にある家のデザインを統一し、新幹線から見た時に一目で「あれが日向岡だ」と思ってもらえるようにした。
分譲地の宣伝にも、住民に愛着を持ってもらう意味でもメリットがあり、JR東海のポスターに採用されたり、映画やテレビアニメの舞台になったりしたこともある。
日向岡住宅を過ぎると、列車は鷹取山と湘南平に挟まれた狭い谷に入る。トンネルをひとつ抜けて間もなく、A席側に見える野立て看板は見逃せない。「プチプチプチプチ……」とらせん状に書かれた黄色い看板。「727」と同様何が言いたいのかわからない、ユニークな広告だ。しかも、この看板は全国でここ1カ所にしかない。
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