北海道新幹線、こうすれば地元は活性化する 政治学者が語る新幹線開業の「正負の効果」

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北海道新幹線H5系と同じ色の市電が函館市内を走る。街の歓迎ムードも盛り上がってきた(写真:ニングル/PIXTA)

北陸新幹線の現在の活況を見ていると意外に思うかもしれないが、2000年代初頭、「北陸新幹線はムダ」という意見が少なからず金沢にあった。筆者が前任校の金沢大学に在籍していた2000年、北陸中日新聞の協力で金沢市で実施した意識調査の結果から、それは明らかである。

調査では、「北陸新幹線は役立つか」という問いに対し、「個人的にも地域的にも、それほど役には立たないと思う」という回答が24.4%にも達していた(参考:「個人的に大いに役立つ」が15.9%、「個人的にはあまり役立たないが、地域全体の役には立つと思う」が55.6%)。

新幹線開業は通常、沿線住民がもろ手を挙げて賛成する「地域の悲願」と思われがちであるが、冷ややかな目で見る住民も決して少なくはない。2016年3月に新函館北斗まで開業する北海道新幹線にも、「札幌まで延伸しないと、北海道新幹線の効果は薄い」といった見方はある。ただ、北陸新幹線を継続的に見てきた筆者としては、沿線の努力と経済状況次第では評価が変わりうる、との印象が強い。

必要となる「非日常」と「差別化」

金沢が観光地である理由は明快だ。「加賀百万石」の伝統と文化、言い換えると東京・大阪・名古屋とは違った歴史や文化が根付いているからである。

行政も「金沢らしさ」を強調したまちづくりを進めてきた。観光で人を呼び込むには、東京・大阪・名古屋の「日常」とは違った物語を提供する必要がある。そして、数ある観光地の中から観光客に選んでもらうためには、自らの強みを認識したまちづくりが欠かせない。

たとえば、金沢市は新幹線駅の差別化のために駅前広場に鼓門・もてなしドームを整備している。新幹線から降りて、鼓門の前でシャッターを押す観光客は少なくない。選ばれるためにこうした差別化の取り組みは必要である。

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