中国発の「世界同時株安」、止める手はあるか 日経平均も巻き添え、昨年来安値割れの懸念

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米国が9年半ぶりの利上げを決めた2015年12月以降は、オフショアでの元安をオンショアが追いかけるような形になっている(右図)。12月には外貨準備が前月より1079億ドル減っており、オンショアではドル売り元買いの介入で元安に歯止めをかけているとみられる。年明けに元安傾向に拍車がかかると、中国はオフショア市場でも、国有銀行を経由した介入を行った。

1月12日にはオフショア市場との乖離がほぼ解消されたが、元が急激に吸い上げられたことで、香港の人民元金利が過去最高の水準へ急上昇する副作用もあった。

元安を静観していたかと思えば、にわかに強引な介入に転じる。そんな中国当局の意図を、ニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎氏は、「実際には変動相場制を志向しているが、その意図が市場にはうまく伝わっていない。ミスマッチを2~3年かけて埋めていくほかない」と見る。

中国経済は落ち込んだまま回復しない

また野村資本市場研究所の関志雄シニアフェローは「変動相場制への移行は、若干の切り上げ圧力があるときのほうがいいが、今は明らかに違う。将来的には、ニクソンショック後の日本のように、当局の関与を残した変動相場制を目指すのでは」と言う。

株にも為替にも共通するのは、政府が対症療法に終始し、新たなルールを見いだしていないことだ。1月4日付の人民日報は1面で今後の中国経済は「V字回復できずL字を描く可能性がある」と構造改革の必要性を説いた。市場原理を徹底させる必要性は中国政府もわかっている。

が、成長率の低下をどこで止められるかがわからない現状で、コントロールを手放すのは怖い。巨大化しすぎた経済が新たな落ち着きどころを見いだすまで、世界は中国に振り回されることだろう。

「週刊東洋経済」2016年1月23日号<18日発売>「核心リポート01-1」を転載)

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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