欧州の「命運」はこの1年の動向で決まる 英国のEU残留の成否が栄枯盛衰を占うカギ

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写真:Rawpixel / PIXTA

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新しい年を迎えようとする欧州連合(EU)は、累積する政治課題という破滅的な状況に直面している。これまでの戦略は一連の苦難を混乱させたに過ぎず、もはや十分でないかもしれないのだ。

無論、EUに危機管理経験がないわけではない。たとえばユーロ危機は連合を破壊すると広く考えられたが、数年間にわたる厳しい首脳会談を経て、多かれ少なかれ問題への対処がなされた。ギリシャの状態は良くないままだが、EUとユーロ圏への加盟は維持された。そしてEUの経済政策強調の仕組みはより強化された。

「戦火の環」

しかし、今日の問題はEUがこれまで直面した中で最も厳しい。EUのリーダーたちがかつて夢見た「友情の環」どころか、欧州の近隣地域は、一連のイスラム過激派によるテロリズムとロシアのウクライナ東部侵略を主因に「戦火の環」と化した。

中東、特にシリアの紛争に端を発する難民危機の深刻化が、こうした課題のひとつである。確かに、現在EU圏内へ入ろうと試みている人々は祖国を追われた人々のほんの一部で、今年到着すると予想される難民100万人はEU人口の0.2%にすぎない。だが、これほどの大人数がたった数カ国にかくも短期間で到着したために、EUの処理能力は限界に達し、シェンゲン域内でのいくつかの国境で検問が再開された。

2016年にEU各国は、国境管理のための主要な施策と移民受け入れ負担の公平化に向けて合意することで、喫緊の課題にめどをつけられるだろう。しかし、難民を欧州社会へ融合させ、外国人排斥的な政党の興隆に対抗するという長期的な課題への対処は、いっそう困難になるだろう。

難民危機とその余波を抜きにしても、EUの直面する課題は手強いものだ。環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)とデジタル単一市場の進展はいずれも、EUのグローバルな競争力にとって重要であり、計画されている資本市場同盟の創設もまた同様である。こうした動きに留まらず、より楽観的であった2003年に作成された「グローバル外交・安全保障戦略」の新たなバージョンが、6月に発表される予定だ。

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