戦後最大の難民危機、問題はどこにあるのか シリア難民だけが難民ではない

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12月24日、トルコからギリシャのレスボス島を目指す難民(写真:AP/アフロ)
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のまとめでは2014年1年間だけで新たに6000万人の難民が発生し、今年も増加、今後も増え続けると予想されている。欧州には中東やアフリカから80万人ともいわれる多くの難民が押し寄せ、第2次世界大戦後最大の「難民危機」と称されるほどの事態に陥っている。なぜこれほど拡大しているのか。難民問題研究の草分け的存在であるオックスフォード大学難民研究センターの小俣直彦・主任研究員に、難民問題の現状と今後の課題、日本の対応について、話を聞いた。

 

――主要な研究テーマは何ですか。

私の今の研究テーマの中心は“refugee economies”「難民経済」で、センターで主管責任者を務めています。

難民の経済活動はそもそもあまりよく知られていません。ゆえに、誤解や根拠のない固定概念がはびこりやすい。現在とりわけ大きな問題点の一つは、難民状態が長期化していることです。英語で“protracted refugee station”「長期化した難民状態」と言います。

難民状態が長期化すると関心が薄れていく

長期化するとよいことはありません。まず、ドナー国(支援国)の関心がだんだん薄れていく。関心が薄れるにつれて、資金援助も減る、難民受け入れ国も疲弊していく。国連機関や難民支援団体は、難民の人たちにできるだけ経済的自立を勧めています。でも、経済的自立を支援するにも、彼らの経済状態とどういう経済生活を営んでいるのかが分からないと、支援しようがありません。

――難民の人たちは、就労せず援助に頼って暮らしている。そんなイメージがありますが、それはステレオタイプな見方でしょうか。

まちまちだと思います。現在のシリア難民のケースだと、緊急援助はかなりのボリュームで行われています。支援に頼らざるを得ない状況にあるからです。

100%援助に頼るのではなく、自分たちでも経済活動を行っています。たとえば、ヨルダンのある難民キャンプでは、自らが香辛料や食材などを扱う雑貨屋や洋服屋を営んでいます。とくに難民状態が長期化するケースでは援助は減る一方なので、援助だけに頼ることはできない現実もある。援助のまったくない難民キャンプもたくさんあります。

――援助がないと、難民は困窮するのではないですか。

それもケースバイケースです。難民の中にも経済格差が出てきます。とくに、長期化した場合は、割と経済的にうまくやっている人たちと、そうした流れに乗れない人たちが出てきます。難民経済の研究から、ポジティブなメッセージを発したいのですが、彼らがうまくやっているのなら援助は必要ない、という議論になりかねない危険性もあります。

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