ベンチャー「逆風」でも投資集める猛者の潜在力 コロナ禍の中で勝ち・負け「選別」の時代に突入

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厳しい環境下でも巨額の資金調達を果たしているベンチャーは存在する(デザイン:杉山 未記)

2020年はベンチャー企業の「選別」が加速しそうだ。コロナ禍は投資環境に水を差している。日本経済新聞社と投資家向けサービスのケップルの調査によれば、今年1~6月のベンチャー企業の資金調達額(速報値)は1042億円と、前年同期比で47%減った。

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起業家側と投資家側のどちらも、ようやく層が厚くなり始めたところでコロナ禍に見舞われた。ベンチャー投資は昨年まで拡大を続けてきたが、一気に冷え込んだように見える。

ところが、個別案件を見ると様相は異なる。1~6月では、太陽光発電サービスのVPP Japanの100億円を筆頭に、次世代電池を開発するAPBが80億円、越境EC(ネット通販)を手掛けるInagoraホールディングスが53億円と、巨額の資金調達を実現したベンチャーが相次いだ。

8月にも100億円超の調達が明らかに

直近では8月4日、ECサイト構築支援サービスや決済システムを展開するヘイが、アメリカの投資ファンド、ベインキャピタルから約70億円を調達すると発表。ほかにもアメリカの決済大手ペイパルなど数社からも出資を受けた。総額は非公表だが、関係筋によれば100億円を超えたという。現時点で今年最大規模だ。同社はエンジニアなどの採用を急拡大し、今後1年半で現在200人の社員数を2倍にすることを計画する。

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「長期で株を保有し、上場後も機関投資家を呼び込んでくれるようなところから出資を受けたかった」。ヘイの佐藤裕介社長はベインからの出資の経緯をそう語る。ベインが日本のベンチャーに投資するのはヘイが初めてだ。

現状の投資環境について、日本ベンチャーキャピタル(VC)協会の赤浦徹会長は「成長性のある、目立つベンチャーに、こぞって投資しようという動きが活発だ」と分析する。実はその兆候は昨年から表れていた。国内ベンチャーの調達総額は拡大した一方で、調達社数は減少。特定のベンチャーに資金が集中する傾向が強まり、1社当たりの調達額が大型化している。

ここ数年の投資マネーを支えてきたのは、ベンチャー投資を本業としているわけではない事業会社だった。ただ、本業がコロナの影響を受け、バランスシートからの直接投資や傘下のコーポレートVC(CVC)の投資姿勢が「かなり慎重になり始めている」と複数のVC幹部は口をそろえる。

一方で、専業のVCには投資余力がある。昨年のファンド設立数や資金規模は過去最高の水準だった。数百億円規模のファンドの組成が相次ぎ、ジャフコやグローバル・ブレイン、グロービス・キャピタル・パートナーズといった大手を中心に投資意欲は旺盛だ。

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