MMTと左翼
島倉原(以下、島倉):MMTの議論に賛同する学者は、なぜみんな左派なんでしょうね。
佐藤健志(以下、佐藤):保守、ないし右派が新自由主義に走ったことに対抗したいのでしょう。先進自由主義諸国では1970年代後半から「福祉国家路線など続けたら行き詰まる。小さな政府で民活路線だ」という風潮が強くなった。日本でもこれが「新保守(主義)」などと呼ばれ、のちの構造改革路線につながります。そんな状況の下「大きな政府で社会保障と格差是正を」と主張したい左派が、理論的基盤としてMMTを見いだしたのだと思います。
柴山桂太(以下、柴山):確かに、左派が「緊縮財政」に対抗する論理を模索するなかで、MMTが出てきたという印象はありますね。
中野剛志(以下、中野):MMT派経済学者のビル・ミッチェルが「MMTはディスクリプティブ(記述的)な理論で、政治的な右左は関係ない」といっていましたが、実際にMMTを唱えている人たちはこの本の著者のランダル・レイを含め、イデオロギー的には完全にリベラルです。ただナショナリズムを強く出しつつMMTを語ることも可能で、MMTはニュートラルだそうですから、私はそっちのほうで語らせてもらっています(笑)。
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