セミナーレポート

経営効果と付加価値をもたらす、
先進的ロジスティクス
日本の物流戦略の現状と課題、最新トレンド

拡大
縮小
ネット通販の拡大に伴い物流施設への需要が増大している。同時に、物流戦略を重視する企業も増えている。今や物流の差が競争力の差になるとも言われる。コスト削減・効率化はもとより、今後企業が成長していくためには、自社の経営・事業戦略とロジスティクス面における戦略を結び付け、付加価値を高めることが必要となる。そうした認識をベースに2015年11月、東京・港区で「GLP物流戦略フォーラム2015」が開かれ、日本の物流の現状、国の施策、先進的な物流戦略などについて、専門家や識者が多面的に検証した。

主催/グローバル・ロジスティック・プロパティーズ
協力/東洋経済新報社

主催者挨拶

グローバル・ロジスティック・プロパティーズ
代表取締役社長
帖佐 義之

「最近、倉庫という言葉が使われなくなった」。物流施設事業を展開する企業のトップとして、帖佐氏はそんな実感からあいさつを始めた。そしてかつては広さ1万平方メートルの物流施設が大型と言われたが、今ではむしろ小型の部類に入ると指摘し、同社が開発する物流施設の平均的な広さが10万平方メートルだと明かした。一方で今は、物流施設に安全性や快適性、環境性などが求められるようになり、物流施設の進化はさらに続くという見方を示した。

【基調講演】
我が国物流の現状・課題とこれからの物流政策

国土交通省
大臣官房 物流審議官
羽尾 一郎

物流は約24兆円の市場規模を持つ一大産業であり、物流不動産もどんどん増えている。羽尾氏はそうした物流産業の概観をまず説明した後、日本のBtoCにおけるEC市場規模の海外との比較の結果から「EC市場はこれからまだまだ伸びる」という見通しを示した。一方で、物流業界の課題としては、労働力不足、トラック運転手の高齢化、物流施設の老朽化などを挙げた。また、最近は流通加工の機能など、物流施設に求められる役割が増大していること、賃貸型の施設が増えていることなどを解説した。

その上で、これからの物流政策のあり方として、(1)競争力強化に向けた物流の高度化・効率化、(2)持続可能な物流ネットワークの構築、(3)安全・安心な物流の確保が3本柱だとした。また、1990年代以降、物流施設が保管型から配送型へと変遷を遂げ、近年はマルチテナント型を基本とする大規模な賃貸型物流施設の整備も急速に進んでいることなどを指摘。

今後も荷主ニーズや社会的ニーズへの対応が不可欠であり、物流施設が果たすべき機能として、(1)高機能化(2)物流の総合化(3)輸送フローの円滑化(4)物流コントロールの拠点化の4点が求められると強調した。引き続き、各方面と意見交換しながら物流政策を進めていくと語った。

【講演1】
地域活性化の観点から見た都市および地方における物流ネットワークの活用
物流事業における技術革新の導入とCSVの取り組み

日本総合研究所
調査部 上席主任研究員
藤波 匠

地域と物流というテーマで話し始めた藤波氏は、まず大都市への一極集中により地方都市の持続性が低下しているという政府の考え方に疑問を呈した。そして多様なデータに基づいて、一極集中ではなく多極集中であり、地方でも中枢都市には若い人がそれなりに集積していることを例証して見せた。その上で「中山間地域では人口減少が今後も進む。したがって、人口減少を前提とした地域づくりをしていかなければいけない」と提起した。

藤波氏はNPOの取り組みなどを紹介しながら、そうした地域づくりに「物流事業者の持っている資源やノウハウを生かしてほしい」と指摘し、「何でも屋」「範囲の経済と民間参入による効率化」「CSV(クリエイティング・シェアード・バリュー)」という三つのキーワードを提示。コミュニティバスをデイサービスの送迎にも使う、あるいは特産品のネット販売をするなど、物流企業も、様々な分野の仕事を効率的に行い、収益性を維持しながら地域の課題を解決することができるのではないかと結んだ。

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