学校では、自分がつまずいても授業は進んでいく。わからないことが重なると、苦手意識が強まり、教科書を開くことも嫌になる。青戸さん自身、その悪循環を経験していた。大人になってからは、わかるところまで戻り、自分のペースで積み上げられた。解けるようになると、問題に取り組むこと自体も面白くなった。
ただ、最初からすべてを学び直したわけではない。英語には、海外生活や仕事で身につけた蓄積があった。塾で複数の教科を教えたことで、中学段階の基礎も固まっていた。
それでも、1年では届かなかった。2年目も不合格。合格したのは、3年目だった。
33歳で東大に合格
33歳で迎えた、3度目の合格発表。
その朝、青戸さんは不合格になる夢を見て目を覚ましたという。パソコンで発表を確認し、自分の番号が見つからない。また1年か――。そんな夢だった。
実際の発表も、自宅のパソコンで確認した。今度は、自分の番号があった。うれしさのあまり、かけていた眼鏡を放り投げたという。それと同時に、ようやく受験が終わったという安堵も大きかった。
後に本人が振り返ったところでは、合格最低点を上回ったのは約1.4点。余裕のある合格ではなかった。合格した年の数学は、手応えがよかったわけでもない。得点開示を見て、予想以上の点数に驚いたという。青戸さんは、その合格には運もあったと受け止めている。
受かったからといって、過去の苦手意識や、受験中の迷いまで消えたわけではない。自分が思いどおりに勉強できないことも、準備を重ねても結果が保証されないことも、その3年間で経験した。中学までは、家で勉強しなくても成績が取れた。けれど、大人になって学び直したときには、毎日少しずつ机に向かうところから始める必要があった。そして、自分が理解できることと、人にわかるように伝えることも違っていた。
青戸さんは大学入学後も、塾講師や家庭教師として教える仕事を続けた。自分で受験を経験したことで、生徒や保護者に伝える言葉にも、自信を持てるようになったという。
仕事に向き合うなかで、青戸さん自身も、つまずいたところまで戻り、学び直してきた。33歳での東大合格は、教えるために始めた挑戦であり、自分がもう一度、学ぶ側になる経験でもあった。


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