さまざまな困難に打ち勝った岩瀬夫妻。「お泊まり家 サザンクロス」開業から2年、運営にまつわる悩みはないのだろうか。
絵奈「う~ん、ない(笑)。お客さまに本当に恵まれて、つらいと感じた出来事がぜんぜんないんです。ただ……」
ただ?
絵奈「夏が暑い。『人間が住むの、無理じゃない?』ってくらい、本当に暑い。暑い以外に不満はないです」
一寿「北海道だと冬はマイナス20度まで下がる日もあります。けれども着こめばなんとかなる。関西の夏は『もう脱げるものは何もないよ』ってくらい暑くて」
サザンクロスも、夏はノースウインドが恋しくなるようだ。
人には「思い切ったほうがいいタイミング」が訪れる
ではフィナーレに、「好きすぎて移住」を実現した先輩から、悩んでいる人たちへメッセージをちょうだいしよう。
絵奈「とりあえず、やってみる。そんな気持ちで今日までやってきました。北海道へ移るときも、宝塚市へ移住するときも、即決したんだよね、うちら」
一寿「勢いでやっちゃえば、案外なんとかなります。中古物件を探していても『もっといい家があるんじゃないか』と思っているうちに買うタイミングを逃して、やめちゃう人もいて、もったいない。『これだ!』と感じたら、悩まずに一発で決めてしまっても、けっこううまくいくものなんです」
絵奈「もちろん、手放しで誰にでも移住を勧めるわけではありません。お子さんが通学されていたり、親御さんの介護が必要だったり、人はそれぞれ事情があります。私たちはたまたま子どももおらず、夫と二人だけでなんでも決められる環境だったからできた。だからこそ、状況が許すならば、思い切ったほうがいいタイミングってあるんじゃないかな」
「思い切ったほうがいいタイミング」、それは「人は望めば誰もが自由になれる」と感じた瞬間なのかもしれない。
絵奈「不思議な巡り合わせで宝塚市へ引越して、自分が民泊をやるなんて想像もしていなかったです。それは水美さんがずっと第一線で活躍してくださるからできること。水美さんにおよそ10年も夢中にさせてもらえるなんて、私は幸せ者だと思います」
「サザンクロス」(南十字星)とは、船乗りたちが「みなみ」の方角を知るために頼りにした星座だ。「推し」とは単なるスターではなく、人生という航路の指針となる星座のような存在ではないだろうか。
岩瀬絵奈さん、一寿さん
ともに神奈川県横浜市出身。2001年結婚。2005年に北海道上川郡美瑛町へ移住。ペットホテル「犬泊家」を開業。宝塚歌劇団の札幌公演で当時新鋭だった水美舞斗(みなみまいと)に魅せられて「推し」はじめ、宝塚歌劇の公演を追いかけるようになる。2021年、兵庫県宝塚市へ移住。一戸建ての住居を新築し、2024年6月、宝塚歌劇を愛する女性限定の宿「お泊まり家 サザンクロス」を開業する。
取材・文/吉村智樹
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