また事業全体の投資回収については、10年間を一つの目安としている。短期的な利益を追うのではなく、街の利便性や魅力を高め、それを施設の収益性向上や住宅流通につなげていく考えだ。
ニュータウン再生ビジネスは全国でも成立するのか
そしてもう一つ注目したいのが、全国への横展開だ。
パナソニック ホームズは、中山台で行っている施策をそのまま全国のニュータウンへ持ち込もうとしているわけではない。行政や企業、地域団体、住民が連携し、地域にある資産や人材を生かしながら、地域課題の解決を具体的な事業につなげる仕組みを、地域特性に応じて展開していく考えだ。
その背景には、中山台での取り組み自体が、地域固有の条件の上に成り立っていることがある。阪神都市圏に位置し、現在も1万人を超える住民が暮らし、既存の住宅、商業施設、公共施設、地域コミュニティも残っている。
さらに今回は、旧開発主体のクラレが中核となる土地・施設をまとまって保有していたため、パナソニック ホームズはそれらを一括して取得することができた。
しかし、こうした条件が全国すべてのオールドニュータウンにそろっているとは限らない。全国展開の鍵は、中山台と同じ条件を再現することではなく、それぞれの地域にある資産や住民のニーズを、どう事業につなげられるかにある。
実際、以前取材した大阪府池田市の伏尾台ニュータウンでは、人口減少や高齢化によって不足していた買い物や交流の機能を、ローソンの新型店舗「ハッピーローソンタウン池田伏尾台店」が担っている。既存の物流網などを生かし、人口減少地域でも店舗を成立させようという試みだ。
一方、中山台でパナソニック ホームズが着目したのは、街に残る住宅や商業施設、土地といった既存資産だ。暮らしやすさを高め、住み替えや住宅流通を促しながら、賃料収入や住宅関連事業などを通じて、街全体の再生を収益につなげようとしている。
両者は事業の規模も仕組みも異なる。しかし、人口減少や高齢化によって生じた課題に、それぞれの企業が持つ強みを生かし、新たな商機を見いだしている点では共通している。
高度経済成長期、多くの企業が増え続ける人口に向けて、新しい住宅や街をつくってきた。だが少子高齢化時代の今、すでにある住宅や施設、地域に残る生活需要を生かすことにも、新たなビジネスの可能性が広がっている。伏尾台と中山台の取り組みは、オールドニュータウンにおける新たなビジネスモデルとなるのか。それとも、限られた地域でしか成立しないのか。その答えが見えてくるのは、まだこれからだ。


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