今回の大規模デモの暴徒化に対して、「なぜ、予測できなかったのか」と野党は政府を批判している。だが、政府にも事情がある。それは10月6日の高校生中心の抗議デモを鎮圧する際、警察が強制力を発揮したことが政府の権力乱用として批判されているためだ。
マクロン大統領は10月17日の抗議デモ後、「暴力はわが国に居場所はない」と断言したが、デモ隊の要求には一切答えようとしなかった。その「上から目線」は、抗議参加者たちの不満の炎に油を注ぐ結果となった。
マクロン政権の任期は27年5月14日までだ。メディアは「マクロン氏の10年間の実績が問われている」と指摘し、「労働組合や諮問機関を軽視した結果だ」と批判している。さらに「社会保障制度に関して、憲法に特例として定められた議会審議を経ずに法案採決する第49条3項を多用した結果だ」という指摘もある。
マクロン政権の「エリート主義」がデモを招いた?
マクロン政権はこの9年間で年金制度改革や法定退職年齢の62歳から64歳への段階的引き上げ、4度にわたる国家予算法案と社会保障財政法案などを成立させているが、これは議会決議を経ずに成立させたものだ。2022~24年のボルヌ政権では23回も同法の使用を連発した経緯がある。
結果的にマクロン政権は「議会制民主主義を弱体化させた」との批判があり、確実に政治不信を生んでいると言える。見方を変えれば、大統領を中心とした政策立案・決定者の集団が、集団が多数派を形成できない議会審議を無視する「エリート主義」が垣間見える。
この状況に対して、1958年から始まった現在の第5共和制が機能不全に陥っているという指摘もある。現在の共和制は、議会の権限に一定の制限を与え、大統領に強大な行政権と解散権を与えている。
しかし、世界情勢の激変の中で、大統領が都合に合わせて次々と首相の首をすげ替える制度や、国民の要望を軽視する大統領の姿勢に疑問を投げかける声は多い。それに1789年のフランス大革命以来、最後は国民が暴力に訴える文化も根強い。
10月17日のデモ後、政府が掲げる治安維持を最優先事項とする姿勢には、労働組合や青年団体が憤りを募らせた。彼らは「具体的な政治的対応」が得られるまで、抗議活動を続ける意向を示した。
10月24日には、学生団体と黄色いベスト運動が新たな抗議行動を呼びかけている一方、ルコルニュ首相は、治安維持のため大規模な警察部隊を配置する方針を示している。さらに主要労働組合が11月5日にストライキとデモを予定しており、労組「労働者の力」(FO)などは賃金引き上げや最低賃金の改善、公務員給与の引き上げを求めている。
ただ、今後の抗議デモで暴力がエスカレートすれば、労組が国民を味方につけることができない可能性もある。いずれにしろ、現段階で終息がいつになるかは不透明だ。


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