いつの間にかステージは人で埋め尽くされ、演者と観客の境目がわからなくなっていた。
ダンスミュージックはまだまだ続く。2曲目は『Gimme! Gimme! Gimme!』(ABBA)だ。シンセサイザーの特徴的な音色から始まり、BPM120のビートが響き渡る。客席には首を上下に動かしながらペンライトを振る人が何名もいる。
昭和の名曲『真赤な太陽』(美空ひばり)のカバー曲がかかると、色とりどりに会場を照らしていたライトが赤くなり、ステージを集中的に染めた。音と光の演出にのみ込まれそうだ。
ふとステージの左端に目を向けると、GENさんが前列に座っている利用者に声をかけているのが見えた。どうやらステージに誘っているようだ。
ステージに上がった利用者の表情には、少し緊張の色が見える。だが、口元にマイクを向けた瞬間、伸びやかな歌声を聴かせてくれた。
まっかに燃えた 太陽だから
真夏の海は 恋の季節なの……
会場のボルテージが一気に上がる。GENさんが「お母さん最高―!」と声をかけると、利用者ははにかんだ笑顔を見せ、その場で踊り始めた。
令和のヒットソングが“刺激”に
昭和の歌謡曲が続くと思っていたら、予想外のメロディーが聞こえてきた。2025年リリースの『ROSE』(HANA)である。
え? こんな最新の曲をかけちゃっていいの? と思ったのは筆者だけではないはず。ところが、利用者も施設スタッフも戸惑うことなくペンライトを振り、思い思いに体を揺らしていた。
最新のヒットチャートはこれで終わらない。2026年リリースの『It’s Me』(ILLIT)、2025年リリースの『JUMP』(BLACKPINK)と、いま話題のK-POPが後に続く。
こうした「高齢者に寄せすぎない選曲」はロマンディスコの特徴の一つだ。
介護施設は穏やかで過ごしやすい場所だが、どうしても刺激が少なくなりやすい。そこにあえて聞きなじみのない曲をかけることで、利用者に新しい刺激を感じてほしいのだと、GENさんはいう。


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