5年越しの三角関係に終止符。ヤマダ電機がビックカメラからベスト電器を奪取
一方のベストは、ここ数年間、成長戦略を描けずにいた。本社のある九州を地盤に全国出店に乗り出して一時は業界首位に上り詰めたが、1998年に安売り攻勢を仕掛けてきたコジマが首位を奪取。その後もヤマダやヨドバシカメラといった全国チェーンに次々と抜き去られていった。
2007年には、業界首位に上り詰めたヤマダが、ベストの筆頭株主に浮上。“奇襲攻撃”に面食らったベストは、ビックカメラと急きょ資本提携を結び、第三者割当増資を実施。“ホワイトナイト”に名乗りを上げたビックカメラが持ち株比率15%の筆頭株主となっていた。
しかし、ビックカメラとの距離がそれ以上に縮まることはなかった。提携した当初はビックカメラとの共同仕入れやフランチャイズ店の出店を進めたものの、店舗は山口と小倉南の2店どまり。ビックカメラ側ではここ数年、ベストとの関係について、「自社の業績立て直しが最優先課題」(宮嶋宏幸・ビックカメラ社長)と語るにとどまっていた。そして今年5月、ビックカメラはコジマを買収して子会社化し、持ち分法適用会社にすぎないベストとの溝は一段と深まることとなった。
だからといって、ベストは単独で生き残る体力を持ち合わせていない。全国チェーンの道をあきらめ、次々と不採算店を閉鎖したが改善の兆しは見えなかった。店舗網を縮小してリストラを繰り返す様子を見て、あるライバル会社幹部は「出店したくてもおカネがない。メインバンクの西日本シティ銀行に首根っこをつかまれている」と指摘していた。
その言葉どおり、今回のヤマダによる買収は銀行主導だったようだ。13日の会見の場でベストの小野浩司社長は、「2年前から複数社と提携交渉を進めてきたが、最も財務基盤が強固で信用力の高いヤマダさんと組むメリットは大きい」と苦しげに説明した。