源泉をそのまま使えるとはいえ、長い築年数が経過した宿の再開にあたっては修繕費用が必要で、すでに金融機関から1500万円の融資を受けていた。融資で賄いきれないトイレや水回り修繕、祖業でもある自炊棟のリフォームなどのためのクラウドファンディングだったが、まずは配管の修理に活用することにした。
人手不足への答えは「主客混在」
従業員不足を理由に無期限休業に入った宿の再開にあたり、そのままの形で再スタートを切ったわけではない。休業前は食事の提供をしていたが、季節限定の働き手不足が休業の引き金になったことから、湯治の原点に立ち返り、湯治客の自炊を前提とした素泊まりに舵を切った。クラウドファンディングの資金で自炊棟をリフォームし、客は食材を持ち込み自ら調理するスタイルを選んだ。
掲げたのは「主客混在」。「もてなす側ともてなされる側の役割を固定するのではなく、お客さん同士が炊事場で交流して一緒に飲んだり、語らったり。そこに私たちも加わったりしながら、そこから新しい何かが生まれる。そんな湯治場にしたい」と村岡さんは言う。
温泉ならではの効果も期待している。「温泉には普段の肩書きを脱ぎ捨てさせる力がある。心のよろいを下ろし、人と人とが交じり合う『社交湯』を目指しています」。過疎化が進む地域で人材が足りないという弱みを、客が関わる余白という特徴に変えようという試みだ。木村さんはこの夏油温泉観光ホテルでの実践を「地方の小さな湯治宿の持続可能な経営のモデルにしたい」。そう考えているという。


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