村岡さんがプログラムを修了し、コロナ禍が収束してきた2024年春、突如、夏油温泉観光ホテルが休業することがサイト上で発表された。従業員を確保できないというのが理由だった。
もともと豪雪地帯で行政の除雪作業が入らないため11月半ばから5月半ばまでの冬期間は休業していたが、2024年は春から秋にかけての時期もオープンしないというのだ。しかも、休業は「無期限」。再開の見通しは立っていなかった。
無期限休業の温泉を復活させたい
推しの温泉だった夏油温泉観光ホテルの無期限休業を知った村岡さんは大きなショックを受けたが、すぐに「心身を癒やしてくれた温泉をなんとか再開させる方法はないだろうか……」と方法を考え始めた。
とはいえ、一介のフリーランスに施設を買い取る力はない。自身のSNSで、夏油温泉観光ホテルの営業が困難な状況に陥っていることを伝え、「こんな地域資源がなくなったら悲しすぎる」と思いを書いた。
すると、20件を超えるコメントが寄せられた。木村さんをはじめとしたプログラムの仲間や地域の経営者・関係者からだった。なかには「なんとか復活させたい」というコメントもあった。「温泉の存続を望んでいるのは自分だけではない」。心の中にあった「なんとかしたい」は、「なんとかできるはずだ」という確信に変わっていった。
一方、村岡さんのこの投稿で状況を知った木村さんもまた「東北に残るこの湯治文化を閉じていいのか……」と居ても立ってもいられない思いに駆られた。夏油温泉の歴史や温泉経営を巡る状況を調べる中で、「東北に今も残る昔ながらの湯治の文化は、一つひとつは大きくないものの、かけがえのない地域資源だ」と気がついたのだという。
2人は夏油温泉でのプログラムで一緒だったメンバーにも声をかけ、自分たちの手で再生の道を探ることを決めた。木村さんはホテルの状況を確認するため、家族とともに現地へ足を運び、建物の老朽化の状況などを見て回った。さらに、オーナーである仙台市の不動産会社から現状の収支の状況などを聞き取った。


※ログイン後、コメント入力が可能です。