「だから、まあ、彼女は若いんだよ。まだまだ子どもだって産めるかもしれないし。若い旦那なら、それこそ二度目の介護問題も考えにくいしな。いつまでも死んだ人に縛られて生きろっていうのも、酷な話だろ」
私がそう言うと、加藤はどんよりとした目を向けました。
「死んだ人に縛られて生きているって? 俺が?」
「いや、お前だけじゃなくてさ。それぞれ考え方はあったとしても、宗教じゃないんだから、そのサークルも、残ろうが、辞めようが、その人の勝手だろ。彼女は、夫の死を過去のものとして、先へ進むことを選んだ、と。さっさと次のステージへ行ったわけだ。だけどお前はずっと前のステージにいる人間だと。そういう人といつまでも一緒には、いられないわなあ」
「友情ならば、永遠なんじゃないのか」
「いや、彼女は、俺にとって、相方を亡くすという壮絶な苦しみを分かち合った、本当の友達だったんだよ。百歩譲って恋愛関係ならば、解消はわかる、だけど友情ならば、永遠なんじゃないのか。なんで彼女の新しい旦那は、そこが理解できないんだ。というか、そんなこともわからない男に惹かれる彼女を、俺は軽蔑している!」
ビールをグッと飲み干し、加藤はジョッキをどんとテーブルに置きました。
「じゃあ、いいじゃないか。お前にとっても、軽蔑に値する女だってことだよ。ソウルメイトなんかじゃなかったんだよ。そもそもソウルメイトってなんだよ。ごまかされてたんだろう、そういうわけのわからん言葉で。お前の、恋愛感情は、まんまと利用されたんだよ。まあ、意図的にか、結果的にそうなっただけなのかはわからないけど」
私も酒が進み、「余計なことは言わない」という誓いをさっさと破って、言いたい放題でした。加藤はうつむいて、神妙に私の話を聞いているようでした。
「ところで気になってたんだが、あの、彼女の子どもに出してやった学費、返してもらったのかよ?」
「……」
「なあ、返してもらったか? お前が出してやる義理はないだろう。その、新しい旦那が出すべきだろう」
「いや、もういいんだよ。俺は金を彼女にあげたんじゃなくて、未来ある子どもたちに寄付したと思ってるんだから」
子どもたち。ということは、息子2人分の学費か。想像以上の金額を聞いて、私はますますヒートアップしてしまいました。


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