「なんだよポッポー、久しぶりに集まったのに。飲みに行かないの?」
加藤は迷っているようでしたが、
「嫁さんの調子が、ちょっとよくなくてさ。まあ、今日は帰るわ。また今度」
そう言って急ぎ足で葬儀場を出て行きました。
加藤から電話がかかってきたのは、仲間の葬儀から数週間経ったころのことでした。奥さんは乳がんのステージⅣ期、ダメもとでセカンドオピニオン先を探しているとのこと。私は専門外ですが、何人か心当たりがあったので、紹介を引き受け、その後はメールでやり取りをしました。その流れから一度、2人で飲みに行きましたが、加藤はすっかり痩せこけて、その意気消沈ぶりは痛々しいほどでした。夫妻には子どもがありません。切望するも授からず、転勤が多かったために養子縁組や里親になることも難しかった、ペットすら飼ってやれなかったと肩を落として語りました。
「お前がそんなに痩せこけていたんじゃ、奥さんが逆に心配するぞ。ほら飲め、もっと食え」
私が勝手に注文した親子丼を、加藤は泣きながら食べました。久しぶりにポッポーの男泣きを見たぞと言うと、弱々しく笑いました。
その年末に、加藤の奥さんは亡くなりました。葬儀では、加藤は涙を見せませんでした。
二度目の絶交宣言
独り身になった加藤のことが気になりつつも、日々の仕事に忙殺されて、あっという間に時がすぎていきました。夫人の葬儀から2、3年経ったころ、Facebookで、珍しく加藤の投稿を見つけました。数人のグループで、山登りでしょうか。アウトドアウェアに身を包み、バックパックを背負って、加藤は笑顔を向けていました。おお、元気になったか。私はにわかに嬉しくなってスクロールしました。やがて、どの写真でも、加藤の手には小さな人形のようなものが握られていることに気がつきました。なんだろう? 気にしながら見ていくと、山菜蕎麦の丼にその人形を立てかけた写真がありました。それはバンザイポーズをした猫の木製マスコットで、お腹の部分にアルファベットでHITOMIと彫り込まれています。仁美、それは亡くなった加藤の奥さんの名前でした。


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