インタビューの中で、自分は「受験があれほど好きなら、受験産業で働けばいいのではないか」と聞いた。問題を解くことが好きで、受験の仕組みにも親しんでいる。その経験が生かせるのではないかと思ったからだ。
岡田さんの答えは、こうだった。
「もしこの先、いまの職場もダメだったら、そうすると思う。でも、受験勉強は趣味だからな。趣味を仕事にしていいものか迷いますよね」
確かに、好きなことを仕事にすれば、すべてが解決するわけではない。自分で問題を解く楽しさと、誰かに教える仕事は違う。仕事になれば、本人が楽しむこと以外にも責任が生まれる。彼には、いま落ち着ける趣味がある。その趣味を仕事にするかどうかは、本人が考えてよいことだ。得意なのだから仕事にすべきだと、周囲が結論を急ぐ必要はない。
本人が面白いと感じる時間には意味がある
テストの前夜に、楽しみで眠れなかった少年は、大人になったいまも問題集を開いている。解いた先に「合格」というゴールはもうない。それでも、解く時間は彼の生活に残っている。
東大合格後に見失ったものは、まだ見つかっていないのかもしれない。けれど、受験が終わったからといって、好きだったものまで全部消えたわけではなかった。
岡田さんの話から考えたいのは、合格後にも勉強を好きでいられるようにするにはどうしたらよいか、ということだ。点数や進学先だけでなく、何を考えている時間が楽しいのか。その楽しさを、受験が終わったあとにも持ち続けられるか。
次の目標がすぐに決まらなくても、本人が面白いと感じる時間には意味がある。休日に開かれる問題集は、岡田さんにとって、いまも自分の「好き」を確かめられる場所なのだと思う。


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