解決する間もなく、今度は歩行障害が始まった。
「歩いていると突然、膝がカクンと曲がり、転んでしまうんです。電車通勤だったので、ホームで転んでしまうことが何度もありました」
なんとか日常生活を続けていたが、不調の勢いは加速度的だった。あるとき、顔の半分が下がり、呂律が回らない。脳梗塞だと思った。すぐに救急車で大きな病院に搬送されたが、「脳梗塞特有の影が見られない」と言われ、入院もなく帰されてしまった。
後日、通院のために歩道を歩いていた際、車を避けようとした瞬間にバランスを崩して転倒。足の親指を骨折し、靭帯も損傷してしまう。
「これ以上は難しい」と退職、続いて愛犬が急逝
いくら不調が起きても続けてきた仕事だったが、これ以上は難しいという自覚もあり、24年3月に60歳で退職した。さらにこの頃、身を切られるようなつらい別れが重なった。愛犬の急逝である。
「まるで、お世話するのが難しくなってきた私を悟ったかのように、あっという間に逝ってしまいました」と、ベッドのそばに飾られた愛犬の写真を見つめながら語る。その横顔に、いかに大切な家族の一員であるかが感じられた。
退職により自宅療養が始まるも、一向に良くならない。特に悪化したのは両脚だった。
自室から数メートル先のトイレへ行くことも難しくなっていく。壁づたいにゆっくりたどり着けたとしても、トイレの手前にある数センチの段差を超えるためには、誰かに支えてもらう必要があった。


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